IT産業では顧客対応の残業が多い
政府は10月30日、「平成30年版過労死等防止対策白書」を閣議決定した。白書は、過労死等が多発していると指摘のあるIT産業、医療業などを中心とした業種・職種等について、労働・社会面の調査を記述しているのが特徴。それによると、IT産業の労働者が挙げる業務でのストレスや悩みの内容では、「納期厳守等のプレッシャー」(48.5%)、「職場の人間関係」(36.8%)が多い。また、過重労働防止に向けた取組みを実施するに当たっての課題としては、「顧客の理解・協力が必要」(56.1%)を挙げる企業が多い。
30年版の白書では、国における主な取組みとして、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成30年7月24日閣議決定)の概要及び働き方改革関連法の定める長時間労働の是正等に関するポイントを記載しているほか、過労死等が多く発生していると指摘のある教職員、IT産業、医療を中心とした重点業種・職種に関する労災事案等の分析など、企業における過労死等防止対策の推進に参考となる調査研究結果を報告している。
その中から、IT産業関係の労働・社会面の調査をみると、所定外労働が発生する理由(複数回答)の労働者調査結果では、「トラブル等の緊急対応のため」(59.1%)、「顧客の問題に対応するため」(47.9%)、「仕様変更に対応するため」(42.6%)など、発注者等顧客からの要望等への対応が多い。
業務に関連するストレスや悩みの内容(複数回答)をみると、「納期厳守等のプレッシャー」が48.5%と最も多く、次いで、「職場の人間関係」36.8%、「上司からの指導や部下・後輩への指導」33.5%の順となっている。
過重労働防止に向けた取組みを実施するに当たっての課題(複数回答)の企業調査結果では、「顧客の理解・協力が必要である」が56.1%と最多く、次いで、「ITエンジニア自身の理解・協力が必要である」45.8%、「業務負担をITエンジニア間で平準化することが難しい」37.3%の順。
次に、医療業の労働・社会面の調査をみると、所定外労働が発生する理由(複数回答)で最も多いのは、医師調査では、「診断
書やカルテ等の書類作成のため」(57.1%)、看護職員調査では、「看護記録等の書類作成のため」(57.9%)といずれも書類作成に関するものとなっている。そのほかでは、「救急や入院患者の緊急対応のため」(医師調査57.0%、看護職員調査45.0%)も多い。
過重労働の防止に向けて実施している取組み(複数回答)の病院調査結果では、「医師事務作業補助者や看護補助者を増員している」(59.5%)、「健康相談又はメンタルヘルスに関する相談の窓口または担当者を設置している、専門職(リエゾンナース等)を配置している」(55.2%)、「院内保育施設を設置・充実させている」(52.8%)が多くなっている。