36協定の特別延長時間の縮減指導を実施

厚生労働省は、先月6日に開かれた第3回「過労死等防止対策推進協議会」(会長・岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)に、過労死等防止対策推進法に基づき政府が作成することになっている過労死等を防止するための対策に関する大綱の案(骨子)を提示した。案では、国が取り組む重点対策の中の啓発に関して、過重労働の疑いがある企業に対する監督指導を徹底するとしている。また、長時間の時間外・休日労働が発生するおそれのある場合には、36協定の特別延長時間の縮減を啓発指導することを掲げている。

  •  昨年11月1日に施行された過労死等防止対策推進法では、政府は、過労死等(業務における過重な負荷による脳・心臓疾患を原因とする死亡、業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡またはこれらの脳・心臓疾患もしくは精神障害)の防止のための対策を効果的に推進するため、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めることを規定している。

    そして、厚生労働大臣は、大綱の案を作成するに当たっては、過労死等防止対策推進協議会の意見を聴くこととされている。

    第3回協議会に示された大綱の案(骨子)は、第1回及び第2回協議会で出された各委員の意見を参考として同省が作成したもの。

    大綱には、過労死等の防止のための基本となる対策として、調査研究等、啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援──の4つの事項を盛り込むことが法で定められている。

    案では、(1)脳・心臓疾患及び精神障害に係る労災補償の状況、自殺の状況、職場におけるメンタルヘルス対策の状況等の現状、(2)過労死等防止対策の基本的考え方、(3)国が取り組む重点対策、(4)国以外の主体(地方公共団体、事業主等、民間団体など)が取り組む重点対策──を大綱の主な柱としている。

    その中で、当面の対策の進め方については、「第一に実態解明のための調査研究を進めていくことが重要」としたうえで、啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援は、調査研究の成果を待つことなく対策を推進するとしている。

    そして、これら4つの対策ごとに基本的な考え方及び国が重点とする取組みを掲げている。

    国が取り組む重点対策の具体的内容としては、まず、調査研究等に関しては、(独)労働安全衛生総合研究所に設置されている過労死等調査研究センター等において、過労死等に係る労災認定事案を分析することとしている。分析に当たっては、認定事案の多い業種等の特性や適用されている労働時間制度、労働時間の把握の状況、労働時間以外の業務の過重性などにも留意するとしている。

    次に、啓発に関しては、①過労死等防止啓発月間(11月)を中心とした周知・啓発の実施、②長時間労働の削減のための周知・啓発の実施、③過重労働による健康障害の防止に関する周知・啓発の実施、④「働き方」の見直しに向けた企業への働きかけの実施及び年次有給休暇の取得促進、⑤メンタルヘルスケアに関する周知・啓発の実施、⑥職場のパワーハラスメント予防・解決のための周知・啓発の実施、⑦大学・高校等における労働条件に関する啓発の実施、⑧商慣行等も踏まえた取組み──を挙げている。

    具体的には、過重労働の疑いがある企業等に対し、労働基準監督署の体制を整備しつつ監督指導を徹底するとしている。また、労働基準法第36条の規定に基づく協定(36協定)について、労働者に周知させることを徹底するとともに、長時間にわたる時間外・休日労働が発生するおそれのある場合、36協定における特別延長時間や実際の時間外労働の縮減について啓発指導することを掲げている。

    さらに、業界団体や地域の主要企業の経営陣に対して働き方改革の実施を働きかけ、働き方改革に取り組む労使の意識高揚のため、シンポジウムを開催するとしている。また、10月を「年次有給休暇取得促進期間」とし、全国の労使団体や個別企業労使に対し、集中的な広報を行うことを掲げている。

    このほか、相談体制の整備に関しては、労働条件や長時間労働・過重労働に関して労働者等が相談できる電話窓口の設置、メンタルヘルス不調、過重労働による健康障害等について労働者等が相談できる電話・メールを活用した窓口の設置──などを挙げている。

    同省では、今回示した案に対する同協議会の各委員の意見を反映したものを第4回協議会に提出する方針。併せて、関係行政機関の長との協議を経た後、今年の夏ごろには大綱を閣議決定する予定。