高齢者の雇用を一層推進する法整備が柱

65歳以後の新規雇用者を雇用保険の適用対象とする雇用保険制度の見直しなど、労働関係6法の「改正一括法」が先月末成立し、一部がこの4月1日に施行された。今回の改正では、高年齢者の希望応じた多様な就業機会の確保及び就労環境を整備するための雇用保険の適用拡大、シルバー人材センターの取扱業務の拡張が目玉になっている。また、労働者の離職防止や再就職の促進を図るため、育児休業の申出ができる有期契約労働者の要件緩和、介護休業の分割取得導入、雇用保険の就職促進給付の拡充などを行っている。

  •  改正一括法(労働関係の異なる6つの法律の改正を内容とした「雇用保険法等の一部を改正する法律案」として今国会に提出され原案通り成立。以下、6つの改正法を総称して「改正一括法」という。法案内容の詳細は本誌第1881号の特集参照)の柱は、①失業等給付に係る保険料率の見直し(労働保険徴収法関係)、②育児・介護休業等に係る制度の見直し(育児・介護休業法、雇用保険法関係)、③高年齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保及び就労環境の整備(雇用保険法、育児・介護休業法、高年齢者雇用安定法関係)、④妊娠した労働者等の就業環境の整備(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働者派遣法関係)、⑤雇用保険の就職促進給付の拡充(雇用保険法関係)──となっている。

    その主な具体的内容は、雇用保険の保険料率の見直しでは、一般の事業の雇用保険率を1000分の15.5に引き下げている(失業等給付に係る率を1000分の12に引下げ。雇用保険二事業に係る率は従前通り1000分の3.5)。なお、平成28年度の保険料率は、改正後の率(平成28年4月1日施行)といわゆる弾力条項発動で1000分の11となっている。同じく、農林水産・清酒製造業、建設事業の保険料率も法改正等により、28年度はそれぞれ1000分の13、1000分の14となっている。

    育児・介護休業制度の見直しでは、育児休業の対象となる子の範囲を拡大し、特別養子縁組の監護期間にある子等を含めている。また、育児休業の申出ができる有期契約労働者の要件を、継続雇用期間が1年以上で、子が1歳6ヵ月に達する日までにその労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者──に緩和している。

    また、介護休業制度について、93日を限度として、対象家族1人につき3回まで分割取得できる制度としている。さらに、事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定外労働をさせてはならないとする新たな仕組みを設けている。

    このほか、介護休暇の取得について、1日未満の単位(厚生労働省令で半日等を規定する予定)での取得を可能にしている(育児・介護休業制度に関する改正の施行期日は平成29年1月1日)。

    高年齢者の雇用を推進するための制度改正では、65歳に達した日以後に新たに雇用される者について雇用保険の適用対象とし、高年齢求職者給付金、就業促進手当、教育訓練給付金などの支給対象としている(29年1月1日施行。ただし、保険料の徴収は平成31年度分まで免除)。

    また、シルバー人材センターの取扱業務について、都道府県知事が市町村ごとに指定する業種・職種においては、有料の職業紹介事業または労働者派遣事業に限り、臨時的・短期的または軽易な業務に係る就業に加え、高年齢退職者の能力を活用して行う業務を含める業務範囲の拡張を行っている(28年4月1日施行)。

    このほか、就職促進給付の拡充として、失業等給付の受給者が早期に再就職した場合に支給される就業促進手当の支給額を、基本手当の3分の1以上を残した場合は支給残日数の60%(改正前50%)、基本手当の3分の2以上を残した場合は支給残日数の70%(同60%)に引き上げている(29年1月1日施行)。

    また、産前産後休業の取得や妊娠・出産したことなどについての女性労働者に対する言動による就業環境を害する行為を防止するため、事業主(派遣先の事業主を含む)に雇用管理上必要な措置を義務付ける男女雇用機会均等法、労働者派遣法の改正を行っている(29年1月1日施行)。