高齢者の柔軟な働き方が可能な環境の整備が必要

 厚生労働省は、「平成28年版労働経済の分析」(通称・労働経済白書)をまとめた。今年の白書は、少子高齢化による供給制約の克服に向け、労働生産性の向上や希望する者が就労などにより活躍できる環境整備が必要であるとの認識のもと、「誰もが活躍できる社会の実現と労働生産性の向上に向けた課題」と題し、方策について分析を行っている。

 白書は3部構成で、第1章「労働経済の推移と特徴」では、一般経済、雇用・失業情勢、労働時間、物価、賃金、消費──について、平成27年度の動向を中心に記述している。

 そして、第2章では、「労働生産性の向上に向けた我が国の現状と課題」、第3章では、「人口減少下の中でも誰もが活躍できる社会に向けて」をテーマに分析している。

 その中で、我が国の労働生産性の現状について白書は、「少子高齢化による供給制約を克服していくことが大きな課題であり、そのためには資本投入の増加に加え、1人ひとりが生み出す付加価値を向上させること、すなわち労働生産性の向上が重要であるが、我が国の実質労働生産性の上昇率はOECD諸国の中では平均的な状況にある」としている。そして、「特に、我が国は、主要国と比較し、無形資産投資のうち、①ソフトウエア等のIT関連である情報化資産への投資が弱いこと、②OFF-JTを始めとする人的資本への投資が弱いこと──が無形資産投資の上昇率が弱い主な要因と考えられ、情報化資産、人的資本への投資を増加させることが課題である」と指摘している。

 また、労働生産性の上昇が労働者に与える影響については、「労働生産性の上昇は賃金の上昇に結びつくなど労働者にとってプラスとなる効果も大きく、また雇用面でみても就業者の減少や失業者数の増加につながっていない」と分析している。

 次に、高年齢者の働き方と活躍のための環境整備について白書は、「我が国では今後、人口の減少が見込まれるが、高年齢者は増加が見込まれ、高年齢者には、就業者も増加しているが、一方で就業に至っていないものの就業意欲のある者も多くいる」と指摘。そのうえで、継続雇用に向けた施策の実施が重要であり、また、柔軟な労働時間設定も必要としている。

 また、限られた人材の活躍に向けた企業・労働者の課題について、「雇用情勢が改善する一方で少子高齢化の進展もみられ、人手不足が生じている。人手不足の中では限られた人材がその経験によって得た能力を発揮し、誰もが活躍できる社会を構築することが重要である」としている。