高プロ制度適用を同意しても撤回可能に
働き方改革関連法案が5月31日、法案の内容を一部修正して衆議院を通過した。同法案は、罰則付きの時間外労働の上限規制を導入するなどの労働基準法改正が目玉となっている。衆議院では、労働基準法の労働時間規制を適用除外する「高度プロフェッショナル制度」の創設に関して、導入の要件になっている労使委員会の決議事項として、同制度の適用を同意した対象労働者が同意を撤回できる手続を追加した。また、雇用対策法の改正で、法に基づき策定する基本方針に定められた施策の実施に関する修正を行っている。
働き方改革関連法案は、政府が今年の通常国会の「最重要法案」と位置づけている。その内容は、労働基準法、労働安全衛生法、労働時間設定改善法、雇用対策法、パートタイム労働法など労働関係の8本の法律を一括改正するもの。
法案は4月6日国会に提出され、同27日に衆議院本会議で法案の趣旨説明及び質疑が行われ、その後、同院厚生労働委員会に付託された。同委員会では、参考人質疑を含めて延べ8日間にわたって審議され、5月25日の質疑終了後に採決が行われ、与党などが提出した修正案が賛成多数で可決され、修正部分を除く原案が同様に可決された。また、与党など提出の附帯決議が行われた。そして、同31日の衆議院本会議で同様に可決、参議院へ送られた。
修正が行われたのは、(1)労働基準法、(2)雇用対策法、(3)労働時間設定改善法──の改正に関する部分について。
労働基準法の改正では、今回の改正で新たに設けられる「高度プロフェッショナル制度」の導入要件に関して、同制度の対象労働者の同意の撤回に関する手続を労使委員会の決議事項とすることが追加された。
同制度は、職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年間104日の休日を確実に取得させることなどの健康確保措置を講じること、本人の同意や労使委員会の決議を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする制度。
原案では、制度の導入要件となっている労使委員会の決議事項は、①対象業務の範囲、②対象労働者の範囲、③対象労働者の健康管理時間(事業場内に所在していた時間と事業場外で業務に従事した時間の合計)を使用者が把握する措置等、④対象労働者の休日確保措置、⑤対象労働者への健康確保措置等、⑥苦情処理措置の実施、⑦対象労働者の不同意に対する不利益取扱いの禁止──などとされていた。修正では、この議決事項に、「対象労働者の同意の撤回に関する手続」を追加している。
このほか、雇用対策法の改正で、国は、労働時間の短縮その他の労働条件の改善等の基本方針において定められた施策の実施に関し、中小企業における取組みが円滑に進むよう、地方公共団体、中小事業主団体、労働者団体等により構成される協議会の設置その他のこれらの者の間の連携体制の整備に努めることが追加された。
また、衆院厚生労働委員会では、高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者の健康確保を図るため、労働基準監督署は、法定の健康確保措置の確実な実施に向けた監督指導を適切に行うこと──など計12項目の附帯決議を行っている。