雇調金に特例、労働保険料の納期限等延長
厚生労働省は、このたびの平成28年熊本地震の影響により、企業の生産活動への影響が生じていることから、当面の緊急雇用・労働対策をまとめた。緊急対策では、雇用調整助成金の支給要件に特例を設けるほか、労働保険料の申告・納付期限を延長する。雇用調整助成金の特例は、生産量、販売量、売上高などの事業活動の縮小の確認期間について、通常は前年同期と直近3ヵ月との比較で行うところ、直近1ヵ月に短縮する。また、特例の適用では、休業等実施計画の提出について遡及適用を行うこととしている。
- 緊急対策の柱は、①被災地における雇用を維持・確保しようとする企業への支援(雇用調整助成金の要件緩和)、②被災地の事業場等に対する労働保険料の申告・納付期限の延長、③被災した就職活動中の学生等のニーズに応じた対応、④被災者や復旧作業を行う者の安全・健康対策、⑤賃金など労働条件面の不安や疑問への対応──となっている。
被災地の企業に対する支援では、地震の影響により事業活動が急激に縮小する事業所が生じ、地域経済への影響が長期化することが見込まれることから、地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、雇用調整助成金の特例(支給要件の緩和)を設ける。
同助成金の生産量等の支給要件は、「生産量、販売量、売上高などの事業活動を示す指標の最近3ヵ月間の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していること」とされているところ、この確認期間を「最近1ヵ月」に短縮する。なお、この特例は、平成28年4月14日以降に提出される休業等実施計画書から適用されることとなっており、平成28年7月20日までに提出のあったものについては、事前に届け出られたものとして扱われることになっている。
労働保険料の申告・納付期限の延長については、毎年6月1日から7月10日までの間に事業主が行うこととなっている労働保険の年度更新の手続に関し、熊本県内に所在地のある事業主に対しては、労働保険料等申告書の提出期限・納付期限を一定期間延長する(延長後の期限は被災者の状況に十分配慮し別途告示で制定)。
被災した就職活動中の学生への支援では、熊本県と大分県の新卒応援ハローワークに設置した「学生等震災特別相談窓口」において、被災した就職活動中の学生等のニーズに応じた職業相談を実施するほか、当該相談を踏まえた企業への働きかけを実施する。
復旧作業での安全・健康に関しては、復旧工事における土砂崩壊災害、土石流災害、墜落・転落災害等の防止対策の徹底及び熱中症の予防対策について建設業関係団体に要請を行っている。また、倒壊家屋の復旧等の作業を安全に実施するため、作業現場のパトロールを行う。
このほか、職業転換給付金制度における「激甚な災害を受けた地域」の指定(熊本県の14市、23町、8村。指定期間は平成28年4月21日から平成29年4月20日まで)による訓練手当、広域求職活動費、移転費の支給、倒産等による未払賃金の立替払い制度における申請手続の簡略化などの措置を講じている。