過労死等防止対策の一層の推進に270億円

厚生労働省は、平成31年度予算概算要求の主要事項をまとめた。それによると、31年度の要求額は一般会計31兆8956億円で、対前年度当初比7694億円(2.5%)増となっている。来年度は、働き方改革による労働環境の整備を重点要求事項のトップに据えている。主な施策としては、働き方改革のために新たに労働者を雇入れ、一定の雇用管理改善を達成した中小企業に対する助成措置を創設する。また、今年7月に改定した過労死等防止対策大綱に基づく対策の一層の推進のため、30年度予算の約2倍の270億円を要求している。

 31年度予算概算要求では、人生100年時代を見据え、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向けて、①働き方改革・人づくり革命・生産性革命、②質が高く効率的な保健・医療・介護の提供、③全ての人が安心して暮らせる社会に向けた福祉等の推進──を重点に要求している。

予算要求の主要事項は、⑴働き方改革による労働環境の整備、生産性向上の推進、⑵人材投資の強化や女性、高齢者、障害者等の多様な人材の活躍促進、⑶安心で質の高い医療・介護サービスの提供、⑷健康で安全な生活の確保、⑸子どもを産み育てやすい環境づくり、⑹自立した生活の実現と暮らしの安心確保、⑺障害者支援の総合的な推進、⑻安心できる年金制度の確立、⑼施策横断的な課題への対応──となっている。

労働行政関係の主な要求事項は、最重点である働き方改革による労働環境の整備では、①働き方改革に取り組む中小企業・小規模事業者に対する支援、②長時間労働の是正をはじめとする労働者が健康で安全に働くことができる職場環境の整備、③同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、④医療従事者の働き方改革の推進、⑤柔軟な働き方がしやすい環境整備、⑥治療と仕事の両立支援──が柱。

具体的な施策としては、働き方改革推進支援センターにおいて、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現等について、ワンストップ型の相談支援等を行う。また、商工会議所・商工会等での出張相談、中小企業・小規模事業者に対する個別相談等の機能・体制の強化を図る。これらに合計75億円を計上している。

長時間労働の是正に関しては、中小企業・小規模事業者が時間外労働の上限規制等に円滑に対応するため、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む場合、中小企業や傘下企業を支援する事業主団体に対する助成を行う。また、時間外労働の上限規制への対応に向けて、働き方改革推進支援センターにおいて、弾力的な労働時間制度等の労務管理に関する技術的な個別相談支援や電話相談等を実施する。これらをあわせて281億円の要求となった。

さらに、過労死等の防止として、過労死等防止対策大綱(平成30年7月改定)に基づき、過労死等に関する調査研究、相談体制の整備など、過労死等防止対策の一層の推進を図るため、30年度予算の約2倍の270億円を計上した。

安全衛生関係の施策では、産業保健総合支援センターにおける中小企業・小規模事業者への訪問支援等の拡充、産業医等の産業保健関係者や事業者向け研修の充実を図る。また、中小企業・小規模事業者に対する助成等の支援により、ストレスチェック制度の実施を含むメンタルヘルス対策の取組みの推進を図る。これらに合計50億円を要求している。

このほか、働き方改革推進支援センターにおいて、業界別同一労働同一賃金導入マニュアル等を活用した相談支援・セミナー等を実施する。また、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を実施した事業主に対する支援(キャリアアップ助成金)、労働契約法に基づく無期転換ルールの円滑な運用やこれを契機とした多様な正社員制度の普及を図るなど、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に合計1082億円を計上している。