裁量制の実態把握する新たな調査手法を検討

厚生労働省は、「裁量労働制実態調査に関する専門家検討会」(座長・西郷浩早稲田大学政治経済学術院教授)を設置し、第1回会合をさる9月20日開催した。同検討会は、現行の裁量労働制の制度の適正化を図るための見直しにあたり、裁量労働制の適用・運用実態を正確に把握し得る調査手法を検討するもの。

裁量労働制の見直しについては、昨年9月に同省が労働政策審議会に諮問した労働基準法の改正案(要綱)で、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大が盛り込まれていた。しかし、前通常国会で成立した働き方改革法による労働基準法改正では、裁量労働制の改正に関する部分が法案から全面削除されている。

その背景には、今年2月、同省が実施した「平成25年度労働時間等総合実態調査」において、一般労働者と裁量労働制対象者の「平均的な者」の1日の労働時間の比較に関して、一般労働者と裁量労働制対象者で異なる調査の仕方をしていたことが判明し、調査結果のうち裁量労働制に係るデータを撤回したという経緯がある。

そして、今年6月29日に成立した働き方改革法の国会審議において、法案に対する附帯決議で、「裁量労働制については、今回発覚した平成25年度労働時間等総合実態調査の公的統計としての有意性・信頼性に関わる問題を真摯に反省し、改めて、現行の専門業務型及び企画業務型それぞれの裁量労働制の適用・運用実態を正確に把握しうる調査手法の設計を労使関係者の意見を聴きながら検討し、包括的な再調査を実施すること。その上で、現行の裁量労働制の制度の適正化を図るための制度改革案について検討を実施し、労働政策審議会における議論を行った上で早期に適正化策の実行を図ること」とされた(平成30年6月28日参議院厚生労働委員会)。

これらを踏まえ今回の検討会では、裁量労働制の実態を把握するための新たな調査に関し、①調査方法及び集計方法、②調査事項、③新たな調査の結果の検証──などについて検討を行うこととしており、今年中には議論の整理を行う予定。

なお、同省では、検討会の報告に基づき、平成31年度にも裁量労働制の実態調査を実施することとしている。