能力開発に積極的な企業は社員のモチベーション高い

厚生労働省は、「平成30年版労働経済の分析」(通称・労働経済白書)をまとめた。今年の白書は、少子高齢化による労働供給制約を抱える日本が持続的な経済成長を実現していくためには、多様な人材が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるように「働き方改革」を推進し、一人ひとりの労働生産性を高めていくことが必要不可欠であり、そのためには、資本への投資に加えて、人への投資を促進していくことが重要との認識のもと、働き方の多様化に対応した能力開発や雇用管理の在り方についてさまざまな視点から多面的に分析を行っている。

白書は2部構成で、第1部「労働経済の推移と特徴」では、平成29年度の雇用情勢の動向、賃金の動向などを中心に記述している。そして、第2部では、「働き方や企業を取り巻く環境変化に応じた人材育成」及び「働き方の多様化に応じたきめ細かな雇用管理」などをテーマに分析している。

その中で、能力開発と企業のパフォーマンス・労働者のモチベーションとの関係について、「OFF-JTや自己啓発支援への費用を支出した企業では、翌年の労働生産性・売上高が向上する関係がみられる」と指摘。また、「能力開発に積極的な企業では、労働者の仕事に対するモチベーションが向上する傾向にある」と分析している。そして、働き方の多様化に応じた人材育成に向けた課題について、「多様な人材の能力発揮に向けて課題がある企業では、人材育成の強化に向けて、人材育成に充てる時間の確保や上司の育成能力の不足を大きな課題と認識している」としている。

次に、多様な人材の能力発揮と労働生産性等や雇用管理との関係について、「多様な人材が十分に能力を発揮し、労働生産性等の向上につなげていくためには、能力開発機会の充実や従業員間の不合理な待遇格差の解消(男女間、正規・非正規間等)などにしっかりと取り組んでいくことが重要」とし、「特に、女性社員や高齢社員に対しては、能力開発の充実や仕事と介護の両立支援に加え、本人の希望を踏まえた配属・配置転換や復職支援などの取組が重要」としている。

また、管理職が感じる職場の環境の変化と管理職の登用・育成に向けた課題について、「業務量の増加や成果に対するプレッシャーの強まりを感じる管理職が多い一方で、労働時間・場所に制約がある社員が増加していると感じる管理職が増加しており、管理職に昇進したいと思わない者が相当程度いる」と指摘している。

そして、「管理職の育成に当たって、希望者は優先的な自己啓発の費用負担が重要と考えるが、企業の認識は十分でない」と分析している。