育休の分割取得可能とし男性の利用促進を
男性の育児参加を促進するための両立支援策を中心に、昨年6月から検討を行っていた厚生労働省の「仕事と育児の両立支援に係る総合的研究会」(座長・武石恵美子法政大学キャリアデザイン学部教授)が報告書をまとめた。報告書は、育児に関わる男性を増加させるための方策として、女性の産後休業期間の8週間を「男性産休」と銘打ち、この間は男性も育児休業等で休む呼びかけを推進すべきとした。そして、男性の育児を促進する法制面の改善策として、育児休業の分割取得・取得可能年齢の引上げなどを提案した。
男性の育児休業取得率は、近年上昇傾向にあるものの、平成28年度は3.16%となっている(厚生労働省「平成28年度雇用均等基本調査」結果)。一方、育児休業の取得希望があったにもかかわらず取得できなかった男性の割合は34.0%となっている(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」平成28年度)。また、育児休業の取得を希望したにもかかわらず取得しなかった理由をみると(複数回答)、「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」(38.5%)、「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」(33.7%)など職場の要因が多く挙げられている(同「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」平成29年度)。
報告書は、こうした現状を踏まえ、男女がともに育児をする社会にするための仕事と育児の両立支援に向けた基本的な考え方を、①育児に関わる男性の増加、②育児に関わる男性の育児への関わり方の改善、③女性のキャリア形成のための対策──の3つの事項に整理して示している。
その中で、男性の育児への関わり方の改善に関しては、すでに育児に関わっている男性について、更なる関わり方の改善や、育児休業期間中のみならず、子育て期間を通して育児への関わりを進める必要があると指摘している。
そして、具体的な対応方針を男性の育児の関わり状況に応じて示した。
まず、育児をしていないなど当事者意識が低いと思われる男性が育児に関わるための方策として、女性の産後8週間の期間について、男性の育児休業、配偶者出産休暇、失効年次有給休暇を活用した育児のための特別休暇などでの休業・休暇を「男性産休」と銘打ち、この間の休業・休暇の取得を推し進めるべきとした。
次に、当事者意識を持った男性がさらに育児に関わるための方策として、男性の育児、家事への関わり方について、例えば、①育児・介護休業法に規定する両立支援制度を利用しながら育児、家事をするケース、②両立支援制度には限らず有給休暇等の制度等を利用して育児、家事をするケース、③制度を利用せず日々の働き方の工夫等により育児、家事をするケース──など家庭の状況等に応じた様々なパターンを提示して企業や労働者に周知すべきとした。
そのうえで、男性が育児をしやすくするための法制的な改善策として、①育児休業の取得可能な期間(原則1年間)は変えずに、育児休業の取得可能な年齢を一定の年齢まで引き上げる、②育児休業の分割など、弾力的な育児休業制度とする、③労働者の育児休業取得の希望に対し、事業主と事前に相談対応できるような仕組みを導入する、④育児休業に係る手続の簡素化、中小企業にも配慮した仕組みを検討する──などを提案している。