職場内の安全衛生活動の総点検実施を
厚生労働省は、今年8月までの労災死亡者数が前年同期より約1割増加していることから、関係事業者団体等に対し、職場の死亡災害撲滅に向けた緊急要請を行った。緊急要請では、労使・関係者が一体となって、基本的な安全管理の取組みを徹底するよう求めている。特に死亡者数が増加している建設業、陸上貨物運送事業については、労働者の立入制限や誘導員の配置など、車両系建設機械などとの接触防止対策の実施、「荷役5大災害防止対策チェックリスト」を活用した荷役作業での安全対策の実施などを示している。
同省のまとめによれば、平成29年1月から8月までの労働災害による死亡者数は557人となっており、前年同期(508人)と比べ49人(9.6%)増加している(29年9月7日現在の速報値。以下、29年において同じ)。同じく休業4日以上の死傷者数は6万6485人で、前年同期(6万5885人)と比べ600人(0.9%)増加している。特に、8月単月の死亡者数は66人となり、対前年同月比24人(57.1%)の大幅増となった。仮に、こうした状況が年末まで続くと、死亡者数が3年ぶりに増加する可能性がある。
今年が計画期間の最終年に当たる第12次労働災害防止計画では、29年までの労働災害による死亡者数及び死傷者数を24年に比べ15%以上減少させる目標を掲げている。28年の死亡者数は928人、同死傷者数は11万7910人となっており、24年と比べそれぞれ15.1%減、1.4%減となっている。死亡者数については、前年より増加しなけば目標を達成できる見通しだが、死傷者数については、目標達成に遠く及ばない状況となっている。
こうしたことから同省は、労働災害防止団体、関係事業者団体約250団体に対して、産業界全体の労働災害防止活動の徹底を緊急要請した。
緊急要請は、①安全作業マニュアルの遵守状況を確認するなど、職場内の安全衛生活動の総点検を実施すること、②安全管理者、安全衛生推進者、安全推進者等を選任し、その職務を確実に遂行させるなど、事業場の安全管理体制を充実すること、③雇入れ時教育等を徹底するなど、効果的な安全衛生教育を実施すること──を挙げ、労使・関係者が一体となって取り組むよう求めている。
死亡者数が増加している建設業(対前年同期比20.0%増)、陸上貨物運送事業(同30.2%増)については、取組みのポイントとして、建設業では、労働者の立入制限や誘導員の配置など、車両系建設機械などとの接触防止対策の実施、高所作業における作業床の設置、安全帯の着実な使用など墜落・転落防止対策の実施──などを示した。また、陸上貨物運送事業では、「荷役5大災害防止対策チェックリスト」を活用した荷役作業での安全対策の実施、「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づく対策の実施──などを示している。