精神障害の業務上認定は過去最多の498件

厚生労働省は、平成28年度「過労死等の労災補償状況」(過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の労災補償状況)をまとめた。それによると、脳・心臓疾患の労災請求件数は825件、業務上認定件数は260件となっている。請求件数は2年連続の増加、業務上認定件数は4年ぶりの増加となった。また、精神障害の労災請求件数は1586件、業務上認定件数は498件となり、請求件数は4年連続増加、業務上認定件数は2年ぶりに増加し、いずれも過去最多となった。

 まず、脳・心臓疾患(労働基準法施行規則別表第1の2第8号に係る脳・心臓疾患)に関する事案の労災補償状況についてみると、請求件数は825件となっており、前年度(795件)と比べ30件増加し2年連続の増加となった。また、支給決定(業務上認定)件数は260件で、前年度(251件)と比べ9件増加し4年ぶりに増加に転じた(28年度以前に請求があり28年度中に業務上認定されたものを含む。以下同じ)。

請求件数及び業務上認定件数を業種別(中分類)にみると、請求件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」の145件(全体の17.6%)、次いで、「その他の事業サービス業」63件(同7.6%)、「道路旅客運送業」43件(同5.2%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」の89件(全体の34.2%)、次いで、「飲食店」14件(同5.4%)、「総合工事業」、「各種商品小売業」、「その他の事業サービス業」がともに8件(同3.1%)──の順となった。

職種別(中分類)にみた請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「自動車運転従事者」の178件(全体の21.6%)、次いで、「営業職業従事者」54件(同6.5%)、「建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)」46件(同5.6%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「自動車運転従事者」の89件(全体の34.2%)、次いで、「法人・団体管理職員」22件(同8.5%)、「飲食物調理従事者」14件(同5.4%)、「商品販売従事者」13件(同5.0%)──の順となった。

また、時間外労働時間別(1ヵ月または2~6ヵ月における1ヵ月平均)の業務上認定件数をみると、「80時間以上100時間未満」が106件と最も多く、次いで、「100時間以上120時間未満」57件、「120時間以上140時間未満」36件と続いている。

次に、精神障害(労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害)に関する事案の労災補償状況は、請求件数は1586件となっており、前年度(1515件)と比べ71件増加し4年連続の増加となり、過去最多を更新した。また、業務上認定件数は498件で、前年度(472件)と比べ26件増加し2年ぶりの増加となり、これまでで最も多かった26年度(497件)を上回り過去最多となった。

業種別(中分類)の請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「社会保険・社会福祉・介護事業」の167件(全体の10.5%)、次いで、「医療業」134件(同8.4%)、「道路貨物運送業」84件(同5.3%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「社会保険・社会福祉・介護事業」の46件(全体の9.2%)、次いで、「医療業」32件(同6.4%)、「総合工事業」27件(同5.4%)──の順となった。

職種別(中分類)にみた請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「一般事務従事者」の198件(全体の12.5%)、次いで、「営業職業従事者」112件(同7.1%)、「商品販売従事者」98件(同6.2%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「一般事務従事者」の47件(全体の9.4%)、次いで、「営業職業従事者」37件(同7.4%)、「法人・団体管理職員」29件(同5.8%)──の順となった。

精神障害に係る事案の場合、精神障害の結果、自殺(未遂を含む)に至るケースがあり、28年度は請求件数が198件(対前年度比1件減)、業務上認定件数が84件(同9件減)となっている。

なお、今回新たに公表した裁量労働制対象者に係る業務上認定状況をみると、平成23年度から28年度までの6年間の業務上認定件数は、脳・心臓疾患が22件、うち専門業務型裁量労働制対象者が21件、企画業務型裁量労働制対象者が1件、また、精神障害が39件、うち専門業務型裁量労働制対象者が37件、企画業務型裁量労働制対象者が2件となった。