精神障害の労災認定500件超え過去最多に

 厚生労働省は、平成29年度「過労死等の労災補償状況」(過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の労災補償状況)をまとめた。それによると、脳・心臓疾患の労災請求件数は840件、業務上認定件数は253件となっている。請求件数は3年連続の増加、業務上認定件数は2年ぶりの減少となった。また、精神障害の労災請求件数は1732件、業務上認定件数は506件となり、請求件数は5年連続増加、業務上認定件数は2年連続で増加し、いずれも過去最多を更新した。

 まず、脳・心臓疾患(労働基準法施行規則別表第1の2第8号に係る脳・心臓疾患)に関する事案の労災補償状況についてみると、請求件数は840件となっており、前年度(825件)と比べ15件増加し3年連続の増加となった。また、支給決定(業務上認定)件数は253件で、前年度(260件)と比べ7件減少し2年ぶりに減少に転じた(29年度以前に請求があり29年度中に業務上認定されたものを含む。以下同じ)。

請求件数及び業務上認定件数を業種別(中分類)にみると、請求件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」の145件(全体の17.3%)、次いで、「その他の事業サービス業」68件(同8.1%)、「総合工事業」45件(同5.4%)、「飲食店」41件(同4.9%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」の85件(全体の33.6%)、次いで、「飲食店」19件(7.5%)、「その他の事業サービス業」16件(同6.3%)、「飲食料品小売業」11件(同4.3%)──の順となっている。

職種別(中分類)にみた請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「自動車運転従事者」の164件(全体の19.5%)、次いで、「営業職業従事者」53件(同6.3%)、「建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)」49件(同5.8%)、「その他の保安職業従事者」46件(同5.5%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「自動車運転従事者」の89件(全体の35.2%)、次いで、「法人・団体管理職員」21件(同8.3%)、「飲食物調理従事者」18件(同7.1%)、「営業職業従事者」と「商品販売従事者」がともに14件(同5.5%)──の順となっている。

また、時間外労働時間別(1ヵ月または2~6ヵ月における1ヵ月平均)の業務上認定件数をみると、「80時間以上100時間未満」が101件と最も多く、次いで、「100時間以上120時間未満」76件、「120時間以上140時間未満」23件、「160時間以上」20件──と続いている。

次に、精神障害(労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害)に関する事案の労災補償状況は、請求件数は1732件となっており、前年度(1586件)と比べ146件増加し5年連続の増加となり、過去最多を更新した。また、業務上認定件数は506件で、前年度(498件)と比べ8件増加し2年連続の増加となり、同じく過去最多を更新した。

業種別(中分類)の請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「社会保険・社会福祉・介護事業」の174件(全体の10.0%)、次いで、「医療業」139件(同8.0%)、「道路貨物運送業」84件(同4.8%)、「情報サービス業」69件(同4.0%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」の45件(全体の8.9%)、次いで、「医療業」と「社会保険・社会福祉・介護事業」がともに41件(同8.1%)、「総合工事業」25件(同4.9%)──の順となっている。

職種別(中分類)にみた請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「一般事務従事者」の222件(全体の12.8%)、次いで、「営業職業従事者」122件(同7.0%)、「商品販売従事者」96件(同5.5%)、「自動車運転従事者」94件(同5.4%)──の順となっている。

業務上認定件数が最も多いのは、「一般事務従事者」の48件(全体の9.5%)、次いで、「自動車運転従事者」38件(同7.5%)、「法人・団体管理職員」35件(同6.9%)、「営業職業従事者」28件(同5.5%)──の順となっている。

精神障害に係る事案の場合、精神障害の結果、自殺(未遂を含む)に至るケースがあり、29年度は請求件数が221件(対前年度比23件増)、業務上認定件数が98件(同14件増)となっている。

なお、裁量労働制対象者に係る業務上認定状況をみると、脳・心臓疾患が4件(前年度1件)で、すべて専門業務型裁量労働制対象者に関するものとなっている(前年度の1件は専門業務型裁量労働制対象者)。また、精神障害は10件(前年度1件)で、うち専門業務型裁量労働制対象者が8件(同1件)、企画業務型裁量労働制対象者が2件となっている。