疾病抱える労働者への事業場の適切な取組み示す
厚生労働省はこのほど、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を取りまとめ、公表した。
このガイドラインは、がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎などの治療が必要な疾病を抱える労働者に対して、事業場において適切な就業上の措置や治療に対する配慮が行われるよう、事業場における取組みをまとめたもの。
ガイドラインは、①治療と職業生活の両立支援の位置づけと意義、②治療と職業生活の両立支援を行うに当たっての留意事項、③両立支援を行うための環境整備、④両立支援の進め方、⑤特殊な場合の対応──などについて示しており、加えて、特に「がん」について留意すべき事項を取りまとめている。また、治療と職業生活の両立支援のための情報のやりとりを行う際の様式例や両立支援プラン・職場復帰支援プランの作成例を掲げている。
具体的な内容は、両立支援を行うための環境整備については、(1)労働者や管理職に対する研修等による意識啓発、(2)労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口の明確化、(3)短時間の治療が定期的に繰り返される場合などに対応するための時間単位の休暇制度、時差出勤制度などの検討・導入、(4)主治医に対して業務内容等を提供するための様式や、主治医から就業上の措置等に関する意見を求めるための様式の整備、(5)事業場ごとの衛生委員会等における調査審議──などを挙げている。
また、両立支援の進め方については、(1)労働者が事業者に支援を求める申出(主治医による配慮事項などに関する意見書を提出)、(2)事業者が必要な措置や配慮について産業医などから意見を聴取、(3)事業者が就業上の措置などを決定・実施(「両立支援プラン」の作成が望ましい)──とする望ましい手順を示し、各プロセスにおける実施事項をまとめている。
「がんに関する留意事項」では、治療や経過観察の長期化、予期せぬ副作用等の出現等が考えられ、経過によって就業上の措置や治療への配慮の内容を変更する必要があるため、労働者は、①手術を受ける場合は、手術後の経過や合併症などに個人差があること、②抗がん剤治療は、1~2週間程度の周期で行うため、副作用によって周期的に体調変化を認めることがあり、特に倦怠感や免疫力低下が問題となること、③放射線治療は、基本的に毎日(月~金、数週間)照射を受けることが多いこと。また、治療中は通院による疲労に加え、治療による倦怠感等が出現することがあるが、症状の程度には個人差が大きいこと──に留意し、事業者に対して必要な情報を提供することが望ましいとしている。
また、がんの診断が主要因となってメンタルヘルス不調に陥る場合もあるため、治療の継続や就業に影響があると考えられる場合には、適切な配慮を行うことが望ましいこと、がんと診断された者の中には、精神的な動揺や不安から早まって退職を選択する場合があることにも留意する必要があること──などメンタルヘルス面への配慮についても挙げている。