生産性向上分の配分先は設備投資増強と処遇改善

(独)労働政策研究・研修機構(JILPT、樋口美雄理事長)は、「ものづくり産業における労働生産性向上に向けた人材育成と能力開発に関する調査」の結果をまとめた。調査は、製造業のうち、鉄鋼業、金属製品製造業、電気機械器具製造業などのものづくり産業で従業員30人以上の企業2万社を対象に昨年11月から12月にかけて実施し、有効回答を得た5094件(有効回答率25.5%)について集計している。

調査結果の中から、労働生産性の現状と向上に向けた取組みに関してみると、労働生産性を向上させるための取組み(複数回答)としては、「改善の積み重ねによるコスト削減」が60.9%と最も高く、次いで、「改善の積み重ねによる納期の短縮」37.2%、「新しい生産設備の導入」35.5%、「営業力の強化」31.4%、「従来の製品や技術への付加価値の付与」30.2%、「単品、小ロットへの対応」27.3%となった。

3年前と比べた労働生産性の変化についてみると、「向上した」とする企業割合が13.8%、「やや向上した」42.7%、「変わらない」31.4%、「やや低下した」8.8%、「低下した」2.1%となっており、全体的には向上したと認識する企業のほうが多くなっている。

3年前と比べて労働生産性が「向上した」または「やや向上した」とする企業における労働生産性向上の具体的な事象(複数回答)としては、「売上・利益の向上」が65.4%と最も高く、以下、「生産・加工にかかる作業時間の短縮」47.8%、「不良率の低下」35.6%、「注文に対する柔軟な対応の促進」33.4%、「技術水準や品質の向上」32.3%と続いた。

3年前と比べて労働生産性が「向上した」または「やや向上した」とする企業における労働生産性の向上分の配分先(複数回答)をみると、「設備投資の増強」(64.8%)と「賃金など処遇の改善」(63.2%)が高くなっており、ほかでは、「作業環境の整備」44.2%、「採用・人材育成の強化」33.1%、「福利厚生の充実」21.5%、「内部留保の拡大」18.1%などとなっている。