生産性を高め時短に取り組む事業者支援に145億円
平成31年度の厚生労働省予算案がまとまった。31年度の予算案は、一般会計32兆358億円(うち社会保障関係費31兆5937億円)で、30年度(31兆1262億円、うち社会保障関係費30兆7073億円)と比べ9095億円(2.9%)の増加となった(30年度の額は当初額)。また、特別会計は、年金特別会計が68兆5838億円(対30年度当初比1兆2069億円増)、労働保険特別会計が3兆7896億円(同1807億円増)となっている(31年度の予算額は平成31年1月18日変更後のもの)。
予算の主要事項は、⑴働き方改革による労働環境の整備、生産性向上の推進、⑵人材投資の強化や女性、高齢者、障害者等の多様な人材の活躍促進、⑶地域包括ケアシステムの構築に向けた安心で質の高い医療・介護サービスの提供、⑷健康で安全な生活の確保、⑸子どもを産み育てやすい環境づくり、⑹自立した生活の実現と暮らしの安心確保、⑺障害者支援の総合的な推進、⑻安心できる年金制度の確立、⑼施策横断的な課題への対応──となっている。
労働行政関係の主な要求事項は、最重点である働き方改革による労働環境の整備では、①働き方改革に取り組む中小企業・小規模事業者に対する支援等、②長時間労働の是正をはじめとする労働者が健康で安全に働くことができる職場環境の整備、③同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、④医療従事者の働き方改革の推進、⑤柔軟な働き方がしやすい環境整備、⑥治療と仕事の両立支援──が柱。
具体的な施策としては、働き方改革推進支援センターにおいて、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現、生産性向上による賃金引上げ、人手不足の緩和等について、ワンストップ型の相談支援等を行う。また、商工会議所・商工会等での出張相談、中小企業・小規模事業者に対する個別相談等の機能・体制の強化を図る。これらに合計76億円を計上している。
長時間労働の是正に関しては、中小企業・小規模事業者が時間外労働の上限規制等に円滑に対応するため、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む場合、中小企業や傘下企業を支援する事業主団体に対する助成を行う。また、時間外労働の上限規制への対応に向けて、弾力的な労働時間制度等の労務管理に関する技術的な相談支援を行うため、働き方改革推進支援センターにおいて、専門家による個別相談支援や電話相談等を実施する。これらの施策に合わせて145億円を計上した。
また、総合的なハラスメント対策を推進するため、セクハラ、パワハラ等の職場のハラスメント撲滅に向けて「ハラスメント撲滅月間」を設定し、事業主向け説明会の開催やシンポジウムの開催等による集中的な周知啓発を実施する。加えて、ハラスメント被害を受けた労働者からの相談に迅速に対応するため、都道府県労働局の相談体制を強化するほか、平日の夜間や休日も対応するフリーダイヤルやメールによる相談窓口を設置するなどに40億円を計上している。
同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に関する施策では、働き方改革推進支援センターにおいて、業界別同一労働同一賃金導入マニュアル等を活用した相談支援・セミナー等を実施する。また、非正規雇用労働者の正社員転換正社員と共通の賃金規定・諸手当制度を新たに定めるなど処遇改善に取り組んだ事業主に対して助成金による支援等を行う。これらに合計1083億円を計上している。