特別条項適用する手続は月ごとに必ず行う

 厚生労働省は、働き方改革関連法による改正後の労働基準法の施行に関する細部事項を示した行政通達を策定し、都道府県労働局長あてに発出した(平30・9・7 基発0907第1号)。それによると、新たな時間外労働の上限規制下で、特別条項付きの36協定により限度時間を超えて労働させる場合に行わなければならない労使間の「手続」は、1ヵ月ごとに必ず行う必要があるとしている。また、使用者の時季指定により取得させなければならない年5日の年次有給休暇については、労働者の希望があれば半日単位での付与も可能としている。

 働き方改革関連法により改正された労働基準法(以下「改正法」)では、時間外労働の上限規制に新たなルールが設けられ、平成31年4月1日から施行される(中小企業は平成32年4月1日施行)。

改正法では、労使協定(36協定)の締結・届出に基づく時間外労働の上限は、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以下(同)とすることが罰則付きで規定された。

原則の上限時間(限度時間)を超えて労働させるためには、いわゆる特別条項付きの36協定を締結しなければならない。特別条項付きの協定には、①限度時間を超えて労働させることができる場合、②限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置、③限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率、④限度時間を超えて労働させる場合における手続──を定める必要がある。

通達では、この「手続」について、36協定の締結当事者間の手続として、36協定を締結する使用者及び労働組合または労働者の過半数代表者が合意した協議、通告その他の手続を定めなければならないとしている。そして、「手続」は、「1ヵ月ごとに限度時間を超えて労働させることができる具体的な事由が生じたときに必ず行わなければならず、所定の手続を経ることなく、限度時間を超えて労働時間を延長した場合は、法違反となる」としている。

さらに、「所定の手続がとられ、限度時間を超えて労働時間を延長する際には、その旨を届け出る必要はないが、労使当事者間においてとられた所定の手続の時期、内容、相手方等を書面等で明らかにしておく必要がある」としている。

また、改正法で導入された使用者の時季指定による年次有給休暇の付与について、半日単位の年休の取扱いに関する解釈を示している。

現在、半日単位の年休については、労働者がその取得を希望して時季を指定し、使用者が同意した場合は、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない限り問題ないとする取り扱いがなされている。

改正法では、年休の付与日数が10日以上の労働者を対象に、年休日数のうち年5日については、使用者が時季指定して取得させることが必要とする新た仕組みを設けている。そして、この使用者による時季指定に当たっては、あらかじめ、その時季について労働者の意見を聴くことが必要とさており、さらに、聴取した意見を尊重することが努力義務とされている。

通達では、半日単位の年休については現行の扱いに変更はないとしたうえで、「労働者の意見を聴いた際に半日単位の年休取得の希望があった場合においては、使用者が年休の時季指定を半日単位で行うことも差し支えない」としている。