法人代表者等の自らの事業場の産業医兼任を禁止
厚生労働省は去る3月8日、法人代表者などによる自らの事業場の産業医兼任の禁止を内容とした「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」を労働政策審議会(会長・樋口美雄慶応義塾大学商学部教授)に諮問した。諮問を受けた同審議会は、これを同審議会安全衛生分科会(分科会長・土橋律東京大学大学院工学系研究科教授)で検討した結果、諮問案を「妥当と認める」とする答申を取りまとめ、同日、塩崎厚労相に提出した。
労働安全衛生法は、常時雇用する労働者数が50人以上の事業場の事業者に対して、医師のうちから産業医を選任することを義務付けている。一方、産業医として選任することができる者の事業場等における役職については、法令上の制限はない。
今回の改正は、法人の代表者や事業経営主、事業場においてその事業の実施を統括管理する者が産業医を兼任した場合、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する観点から、産業医としての職務が適切に遂行されないおそれが考えられるため、これら法人の代表者などの産業医の兼任を禁止することにしたもの。
産業医として選任できなくなるのは、①事業者が法人の場合は当該法人の代表者(代表取締役、医療法人・社会福祉法人の理事長など)、②事業者が法人でない場合は事業を営む個人、③事業場においてその事業の実施を統括管理する者(病院・診療所の院長、老人福祉施設の施設長など)──となっている。なお、改正省令の施行期日は平成29年4月1日となっている。