比較対象は「同一使用者の下の正社員」で
厚生労働省は、政府の会議が昨年末にまとめた「同一労働同一賃金ガイドライン案」を確定・施行するための根拠となる法整備について検討する労働政策審議会の議論をスタートさせた。法整備の論点は、労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備、行政による裁判外紛争解決手続の整備──など。初回は、同省から、均等・均衡待遇の比較対象となる者について、現行法による「同一の事業所に雇用される通常の労働者」から、「同一の使用者に雇用される正規雇用労働者」に変更する案などが示された。
「同一労働同一賃金」の実現は、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)の中で、“最大のチャレンジ”と位置付けられている「働き方改革」の中心事項。昨年9月に設置された政府の「働き方改革実現会議」(議長・安倍首相)は、有識者の検討結果を経て、昨年末に「同一労働同一賃金ガイドライン案」をまとめた。そして、同会議は今年3月、同一労働同一賃金の実効性を確保する法改正、法改正による時間外労働の上限規制導入などを柱とした「働き方改革実行計画」を決定した。
実行計画には、同一労働同一賃金ガイドライン案に記載していない待遇も含め、不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争えるよう、その根拠となる法整備の作業を進めることが明記された。具体的には、関係するパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法──の3つの法律を改正するとし、併せて、今年度中に改正法案を国会に提出するロードマップが示された。
同省は、関係3法の改正に向けた検討を行うため、労働政策審議会の関係分科会(労働条件分科会、職業安定分科会、雇用均等分科会)にそれぞれ部会を設置した。そして、3つの部会を合同する部会とし、関係3法の改正をまとめて議論する形で進めている。
第1回の部会では、検討を開始するにあたり、同省から論点の全体像(案)及び論点に関する案が示された。それによると、論点は大きく分けて、①労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備、②労働者に対する待遇に関する説明の義務化、③行政による裁判外紛争解決手続の整備──の3点。
そして、労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備の案(短時間労働者・有期契約労働者)として、現行のパートタイム労働法(以下「現行法」)による均等待遇規定について、有期契約労働者についても対象とすること、また、比較対象となる者について、現行法では「同一の事業所に雇用される通常の労働者」としている点を「同一の使用者に雇用される正規雇用労働者」とすることなどが示された。
同じく、労働者に対する待遇に関する説明の義務化に関する案として、現行法が、事業主に対して義務付けている説明事項(昇給・賞与・退職手当の有無に関する書面交付等による明示、待遇の内容等に関する説明、待遇決定等に際しての考慮事項に関する説明)を、有期契約労働者についても同様とし、さらに、これらに加え、短時間労働者・有期契約労働者が求めた場合には、正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等についての説明義務を課すことなどが示された。