残業の上限規制の新ルールは来年4月施行

 労働基準法、労働契約法など8本の法律の改正を内容とした働き方改革関連法が、6月29日の参議院本会議で可決、成立した。同法の最大の目玉は、時間外労働の上限規制に新たなルールを設けた労働基準法の改正だ。時間外労働は月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(同)が限度となり、これを超えた時間外労働は罰則の対象となる。なお、この上限規制は平成31年4月1日(中小企業は32年4月1日)施行となっている。

 安倍内閣が今年の通常国会の「最重要法案」と位置付けていた働き方改革関連法が、国会の会期を延長して成立した(衆院で一部修正。本誌第1963号既報)。同法は、①労働基準法、②じん肺法、③雇用対策法、④労働安全衛生法、⑤労働者派遣法、⑥労働時間等の設定の改善に関する特別措置法、⑦パートタイム労働法、⑧労働契約法──の8本の法律を改正する内容となっている。

そして、その中心が労働基準法の改正。主な改正項目は、①フレックスタイム制の見直し、②罰則付きの時間外労働の上限規制の導入、③年次有給休暇制度の見直し、④高度プロフェッショナル制度(通称・高プロ制度)の創設、⑤中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し──などとなっている。中でも、時間外労働の上限規制は、同法制定・施行の昭和22年以来の根本的改正となる。

その具体的内容は、法定労働時間を超えた労働を可能とする労使協定(いわゆる36協定)で定める延長時間の限度は、月45時間、年360時間(1年単位の変形制で対象期間が3ヵ月を超える場合は月42時間、年320時間)とする。36協定には、時間外・休日労働の対象となる労働者の範囲、協定の対象期間(1年間に限る)、協定の対象期間における1日、1ヵ月、1年のそれぞれの延長時間または労働させることができる休日日数──などを定めるとしている。

また、36協定では、上記の事項のほか、通常予見するこができない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に原則の限度時間を超えて労働させる必要がある場合は、月100時間未満、年720時間以下の延長時間を定めることができるとしている。この場合には、原則の限度時間を超えることができる月数として、6ヵ月以内の月数を定めることが必要としている。

さらに、36協定に基づく時間外・休日労働の時間数の限度として、1ヵ月の時間外・休日労働は100時間未満、対象期間の初日から1ヵ月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月の期間を加えたそれぞれの期間の時間外・休日労働の1ヵ月平均は80時間以下──とする要件を設けている。

そして、この要件に適合しない36協定は無効となり、罰則の対象となる。ただし、これらの上限規制は、建設事業、自動車の運転業務、医師につては、改正法施行から5年間は適用を猶予する。また、新技術・新商品の研究開発業務は、医師の面接指導等の措置を設け、上限規制は適用しない。

フレックスタイム制の見直しでは、清算期間の上限を3ヵ月に延長する。年休の見直しでは、付与日数が10日以上の労働者を対象に、年休日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならない仕組みを設ける。また、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率(50%以上)について、中小企業の適用猶予措置を廃止する。

高プロ制度は、職務の範囲が明確で一定の年収要件(少なくとも1000万円以上を省令で規定予定)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定を適用除外する。

このほか、企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の実効ある是正を図るため、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の規定を改正している。

具体的には、短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化し、併せて、有期雇用労働者の均等待遇規定を整備している。また、派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化している。

なお、施行期日は、労働基準法の改正が平成31年4月1日(中小企業の時間外労働の上限規制は32年4月1日、中小企業における割増賃金率の適用猶予廃止は35年4月1日)、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正が32年4月1日(中小企業のパートタイム労働法、労働契約法の改正は33年4月1日)となっている。