残業の上限規制に加え高度プロ制度盛り込む
厚生労働省は先月8日、働き方改革を実行するため、時間外労働に罰則付きの上限規制を設けるなどの労働基準法改正など8つの法律の一括改正を内容とした「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」を労働政策審議会に諮問した。そのうち労働基準法改正案は、同審議会の建議(平成29年6月)に基づく時間外労働の上限規制に加え、平成27年4月に国会に提出された後、いっさい審議入りすることなく現在も継続審議になっている同法改正案とほぼ同じ内容のものを一本化したものになっている。
法案要綱は、⑴労働基準法、⑵じん肺法、⑶雇用対策法、⑷労働安全衛生法、⑸労働者派遣法、⑹労働時間等の設定の改善に関する特別措置法、⑺パートタイム労働法、⑻労働契約法──8つの法律の改正を内容としている。
その中の労働基準法の改正案をみると、①時間外労働の上限規制、②中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止、③年次有給休暇の取得促進、④フレックスタイム制の見直し、⑤企画業務型裁量労働制の見直し、⑥高度プロフェッショナル制度の創設──が柱になっている。このうち②~⑥については、現在継続審議中の「労働基準法等の一部を改正する法律案」(平成27年4月3日提出)とほぼ同内容となっている。
まず、時間外労働の上限規制については、週40時間・1日8時間の法定労働時間を超えた労働を可能とする労使協定(いわゆる36協定)で定める延長時間の限度は、1ヵ月45時間・1年360時間(1年単位の変形労働時間制で対象期間が3ヵ月を超える場合は1ヵ月42時間・1年320時間)とする。36協定には、時間外・休日労働の対象となる労働者の範囲、協定の対象期間(1年間に限る)、時間外・休日労働をさせることができる場合、協定の対象期間における1日・1ヵ月・1年のそれぞれの延長時間または労働させることができる休日の日数──などを定めることとしている。
また、36協定では、上記の事項のほか、通常予見することができない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に原則の限度時間(1ヵ月45時間・1年360時間)を超えて労働させる必要がある場合は、1ヵ月100時間未満・1年720時間以下の延長時間を定めることができるとしている。この場合、原の限度時間を超えることができる月数として、6ヵ月以内の月数を定めることが必要。
さらに、36協定に基づく時間外・休日労働の時間数の限度として、1ヵ月の時間外・休日労働は100時間未満、対象期間の初日から1ヵ月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月の期間を加えたそれぞれの期間の時間外・休日労働の1ヵ月平均は80時間以下──とする要件を設けている。
ただし、これら時間外労働の上限規制は、新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務については適用しないこととし、また、建設の事業、自動車の運転業務、医師については、改正法施行から5年間は適用しないとしている。
なお、上記の要件に適合しない36協定は無効となり、同法違反を構成し、罰則の対象となる。
次に、月60時間を超える時間外労働に関する割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。年次有給休暇の取得促進に係る改正では、付与日数が10日以上の労働者を対象に、年休日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならない新たな仕組みを設ける。フレックスタイム制の見直しでは、清算期間の上限を3ヵ月に延長する。
企画業務型裁量労働制の見直しでは、対象業務に、「事業運営に関する事項について企画、立案、調査及び分析を行い、その成果を活用して裁量的にPDCAを回す業務」と「課題解決型提案営業」を追加する。
高度プロフェッショナル制度は、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者が、高度な専門的知識を必要とする業務に従事する場合に、事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間の合計時間の把握、1年104日以上かつ4週4日以上の休日の付与、健康確保措置を講じること、本人の同意及び委員会の決議などを要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定を適用除外する新たな仕組みを設ける。改正法の施行期日は、平成31年4月1日(中小企業における割増賃金率の適用猶予廃止は34年4月1日)となっている。