新ガイドラインに基づく時間管理を指導
厚生労働省は、「平成29年度地方労働行政運営方針」を策定し、都道府県労働局に通達した。29年度の運営方針における労働基準行政の重点施策では、過重労働解消の取組みとして、各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヵ月80時間を超えている疑いがある事業場や長時間労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導を引き続き徹底する。また、賃金不払残業防止のため、監督指導において、今年1月に策定されたガイドラインに基づいて労働時間管理が行われているか確認するとしている。
運営方針は、今年度の地方労働行政の柱を示したもので、各都道府県労働局では、これを踏まえて各々の管内事情に即した重点を盛り込んだ独自の運営方針を策定し、行政運営を行っている。
29年度の運営方針は、労働行政を取り巻く情勢、地方労働行政の課題、地方労働行政の展開に当たっての基本的対応を記したうえで、重点施策を行政分野別(担当部署別)に示している。
行政分野別の重点施策は、①総合労働行政機関として推進する重点施策、②雇用環境・均等担当部署の重点施策、③労働基準担当部署の重点施策、④職業安定担当部署の重点施策、⑤労働保険適用徴収担当部署の重点施策、⑥東日本大震災からの復興支援──となっている。
労働基準行政に関する重点施策では、過重労働が行われているおそれがある事業場に対して、適正な労働時間管理及び健康管理に関する窓口指導、監督指導等を徹底する。特に、各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヵ月当たり80時間を超えている疑いがある事業場及び長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対して、引き続き監督指導を徹底する。
また、事業場における基本的労働条件の枠組み及び管理体制を確立・定着させるため、労働基準関係法令の遵守徹底を図り、重大または悪質な事案に対しては厳正に対処する。そして、同種事案の発生を防止するため、司法処分事案や監督指導結果の事例等を積極的に公表する。特に、労働契約の締結に際しての労働条件の明示や時間外労働協定の締結・届出について、使用者に対する指導を徹底するとしている。
賃金不払残業の防止対策では、29年1月策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を周知・徹底し、監督指導において当該ガイドラインに基づいて労働時間管理が行われているか確認するとともに、重大・悪質な事案に対しては、司法処分を含め厳正に対処する方針を打ち出している。
安全衛生対策では、産業医への長時間労働者に係る情報提供の義務化、健康診断実施後の有所見者に係る医師の意見聴取の充実等に関する改正労働安全衛生規則(29年6月1日施行)の周知徹底を図る。また、産業医の未選任事業場に対して指導等を行うこととしている。
次に、職業安定行政の重点では、求人票の記載内容と実態が異なる問題への対応として、求人受理時における事業主への確認を徹底するとともに、問題がある場合は、求人の一時紹介保留を含め、厳正な指導等を行う。また、求人票に明示された労働条件と実態が異なっていると求職者等から申出があった場合は、速やかに事実確認を行い、必要に応じて事業主に是正指導を行う。なお、この問題については、これまで以上に労働基準行政との積極的な連携を図ることしている。
このほか、雇用環境・均等行政の重点では、改正育児・介護休業法の確実な履行確保のため、労働者からの相談が多い業種や有期契約労働者が多く雇用されている業種・企業など重点対象を定めて、育児休業制度等の規定が未整備の事業所に対して規定の整備を促す等、改正法の確実な履行確保を図る。また、介護離職が多い業種・企業など重点対象を定めて、介護休業制度等の規定が未整備の事業所に対しては、改正法の内容に沿った規定の整備を促すこととしている。
男女雇用機会均等法の履行確保に関しては、配置・昇進について男女間の事実上の格差が生じている企業には、その原因を詳細に確認し、法違反に対しては迅速・厳正に指導を実施し、是正を図るとしている。