当事者代表委員らが法改正に関する意見書を提示

厚生労働省は1月26日、第10回「過労死等防止対策推進協議会」(会長・岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)を開催した。今回の協議会では、今後の過労死等防止対策が議題となり、3年前に定められた「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直しの議論が本格的に始まった。

平成26年11月1日に施行された過労死等防止対策推進法では、政府は、過労死等の防止対策を効果的に推進するため、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めることを規定している(第7条)。そして、平成27年7月24日、現在の大綱が閣議決定された。また、大綱には、大綱に基づく過労死等防止対策の推進状況などを踏まえ、おおむね3年を目途に見直しを行うとする規定が置かれている。大綱の変更に当たっては、過労死等防止対策推進協議会の意見を聴くことが法に定められている(同条)。

なお、法の見直しに関しては、法施行後3年を目途として、施行状況などを勘案して検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずることになっている(法附則)。

第10回協議会では、法及び大綱に基づく施策の実施状況、大綱で定められている調査研究等の実施状況が説明され、それに対する質問などが出された。また、当事者代表委員(4名)と専門家委員の一部の計7名の委員による「過労死等防止対策推進法施行3年後の見直し及び大綱の改定に当たっての意見」の資料が提出された。

意見書は、「これまでの調査研究等により得られた知見を生かして、過労死等の防止のための対策が効果的に推進されるよう、発展的な法改正を実現する必要がある」として、改正案のイメージを示している。さらに、大綱の改定について、法改正が行われた場合に、それを大綱に取り込み具体化すべき点などを掲げている。

その主な内容としては、使用者の責務に関する規定について、「事業主は、国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力すとともに、過労死等の防止のための取組を自ら実施するよう努めなければならない」と改め、責務を明確化することを求めている。併せて、労働組合の責務を定める規定の新設を示した。

また、労働時間の把握と記録、労働時間の上限設定等に関して、「政府は、過労死等の防止のための対策の推進状況を踏まえ、実労働時間の把握及び記録、労働時間の上限の設定等、過労死等の防止のために必要な法制又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする」との国の義務を規定することなどを示した。

さらに、大綱の改定については、平成32年までに達成すべき数値目標として示されている「週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下」を「週労働時間60時間以上の雇用者の週40時間以上のフルタイム雇用者に占める割合を5%以下」に改めることを挙げている。

このほか、深夜交替勤務に従事する者については、労働時間を軽減することが特に重要なこと、過労死の防止には最低必要休息時間以上のインターバル休息を確保することが欠かせないこと、使用者と労働組合がインターバル休息を確保する制度の導入と普及を図るために努力すべきこと──などを大綱に書き入れることを挙げている。