小事業場のストレスチェック実施を支援

厚生労働省は、「平成28年度地方労働行政運営方針」を策定し、都道府県労働局に通達した。28年度の労働基準行政の重点施策では、働き過ぎ防止に向けた取組みとして、特別条項付きの三六協定において、特別延長時間に係る割増賃金率を定めていないなど不適正なものに対する指導を行う。また、自動車運転者の長時間労働の改善に向け、国土交通省と連携して的確な監督指導を実施する。職場のメンタルヘルス対策では、労働者数50人未満の小規模事業場でのストレスチェック制度導入のための支援を行うとしている。

  •  運営方針は、今年度の地方労働行政の柱を示したもので、各都道府県労働局では、これを踏まえて各々の管内事情に即した重点を盛り込んだ独自の運営方針を策定し、行政運営を行っている。

    4月1日付で策定された28年度の運営方針は、地方労働行政の課題、地方労働行政の展開に当たっての基本的対応を記したうえで、重点施策を行政分野別(担当部署別)に示している。

    分野別(担当部署別)の重点施策は、(1)東日本大震災からの復興支援、(2)総合労働行政機関として推進する重点施策、(3)雇用環境・均等担当部署の重点施策、(4)労働基準担当部署の重点施策、(5)職業安定担当部署の重点施策、(6)労働保険適用徴収担当部署の重点施策──となっている。

    その中から、労働基準行政に関する重点をみると、27年度までは労働基準部が所掌していた「働き方改革」、「ワーク・ライフ・バランスの推進」などの取組みが、28年度からは「雇用環境・均等部(室)」(平成28年度設置)の所掌となったことから、両部が連携により、より良い労働条件の実現に向けた総合的な施策を推進するとしている。

    そして、施策の柱として、①働き過ぎ防止に向けた取組みの推進、②労働条件の確保・改善対策、③最低賃金制度の適切な運営(最低賃金額の周知徹底等)、④労働者が安全で健康に働くことができる職場づくり、⑤労災補償の迅速・適切な処理等、⑥署の窓口サービスの向上、各種権限の公正かつ斉一的な行使、⑦社会保険労務士制度の適切な運営、⑧家内労働対策の推進──を掲げている。

    働き過ぎ防止に向けた取組みの推進については、長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害を防止するため、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に基づき、過重労働が行われているおそれがある事業場に対して、適正な労働時間管理及び健康管理に関する窓口指導、監督指導等を徹底する。また、労使当事者が時間外労働協定(三六協定)を適正に締結するよう関係法令の周知を徹底するとともに、特別条項において限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めていないなどの不適正な協定が届け出られた場合には、「時間外労働の限度に関する基準」等に基づき指導を行うとしている。

    また、特定の労働分野における労働条件確保については、自動車運転者の長時間労働対策として、国土交通省と連携して、地方運輸機関との連絡会議を開催し、自動車運転者の労働条件改善等に係る情報・意見交換を行い、それを踏まえ、長時間労働が行われるなど労働時間等の労働条件の確保に問題があると認められる事業場に対して的確な監督指導を実施する。さらに、タクシー運転者の賃金制度のうち、累進歩合制度の廃止に係る指導等について、一層の徹底を図ることとしている。

    「労災かくし」の排除に係る対策としては、全国健康保険協会都道府県支部との連携による労災保険給付の請求勧奨を行うとともに、労災補償担当部署と監督・安全衛生担当部署間で連携を図りつつ、「労災かくし」の疑いのある事案の把握及び調査を行うとした。

    次に、安全衛生対策については、労働災害を減少させるための重点業種として、製造業、建設業、陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設、飲食店を中心に取組む。その中で、第三次産業対策では、安全管理者の選任が義務付けられていない業種において、事業場の安全管理体制の構築を図るため、安全推進者を選任し、必要な権限を付与した上で職務を遂行させるよう、安全推進者の必要性及びその配置等について周知・指導を行う。

    また、職場におけるメンタルヘルス対策では、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について、実施の徹底を図るとともに、実施が努力義務となっている労働者数50人未満の事業場に対しては、産業保健総合支援センターによる制度導入のための支援等、制度の円滑な実施に向けた支援の活用の促進を図ることとしている。