官民一体で今夏の「朝型勤務」推進を展開

厚生労働省は先頃、この夏の期間、朝早く出勤する「朝型勤務」を導入するなどにより、働き方を含めた生活スタイルの変革を企業の実情に応じて取り組むよう、経団連など主要経済団体に対し相次いで要請した。要請を受けた経団連は、会員企業に対して、同省からの要請内容を伝えるとともに、朝型勤務実施などについての労使の自主的な取組みの検討を呼びかけた。また、政府は、民間企業へのこうしたアプローチに先立ち、今年7月と8月、全ての府省等で勤務時間開始時刻を1~2時間程度早めることを決めた。

  •  朝型勤務(従業員の多様なライフスタイルを実現するため、始業時刻の前倒しや、やむを得ない残業は朝に回して夕方に退社する等の働き方)の推進については、「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)において、働き過ぎ防止のための取組強化として、「仕事と生活の調和の取れた働き方を推進するため、特に、朝早く出社し、夕方に退社する「朝型」の働き方を普及させる」とされた。

    これを受けて厚生労働省は、昨年9月、長時間労働対策の取組強化を総合的に推進することを目的に、厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を立ち上げた。

    同推進本部の「働き方改革・休暇取得促進チーム」では、企業の自主的な働き方の見直しを推進するため、本省幹部による企業経営陣への働きかけを行っている。さらに、今年1月には全国47都道府県労働局に「働き方改革推進本部」を設け、労働局長らが地元企業に対し、仕事の進め方の見直しによる労働時間短縮などを働きかけている(本誌第1846号「労働局ジャーナル」参照)。また、平成27年度の地方労働行政運営方針では、労働基準行政の重点施策の中の1つに、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた働き方・休み方の見直しとして、「朝型」の働き方などの生産性が高く仕事と生活の調和が取れた働き方の普及に向けた周知・啓発を行うことが掲げられた。

    こうした中、3月27日に安倍首相は、昼が長い夏は朝早くから働き、夕方からは家族や友人との時間を楽しむという、夏の生活スタイルを変革する新たな国民運動を展開すること及び厚生労働省は民間企業に対して、この取組みの趣旨が浸透するよう周知に努めることなどを指示した。

    これらを踏まえ塩崎厚生労働大臣は去る4月20日、榊原経団連会長に、夏の生活スタイル変革に向け、朝型勤務やフレックスタイム制の活用など各企業の実情に応じた労使の自主的な取組みの実施について、傘下団体・企業への周知啓発を要請した。また、4月27日には山本厚生労働副大臣が、日本商工会議所と全国中小企業団体中央会を訪ね、同様の要請をそれぞれ行った。要請を受けた経団連は早速、それぞれの企業の実情に応じた労使の自主的な取組みを検討するよう会員企業に通知した。

    政府は、こうした国民運動を展開するに当たって、国家公務員が「夏の生活スタイル変革」を率先して実践することとし、今年7月と8月の2ヵ月間、原則として全ての府省等(地方機関等を含む)で通常の勤務時間開始時刻を1~2時間程度早め、早朝出勤の職員は原則定時退庁とすることなどを決定した。また、総務省は、地方公共団体においても国家公務員のこうした取組みを参考としつつ、各々の事務事業に支障が生じないないよう留意したうえで、各団体の実情に即した柔軟な取組みを検討するよう各地方公共団体に通知を発出した。

    厚生労働省は、今回の要請に関して、「朝型勤務への移行は、工場など生産部門では簡単ではない部分もあると考えられる。一方、本社部門などでは、全員が朝型勤務にするというのではなく、工夫次第で出来る人にはやってもらうという方法もあるのではないか」(労働基準局労働条件政策課労働条件確保改善対策室)としており、民間企業で取組みが広がることに期待を寄せている。