基本手当を拡充し賃金日額も引き上げる
基本手当等の算定に用いる賃金日額の上・下限額の引上げ、失業等給付に係る雇用保険料率の引下げなど、労働関係の4法の改正を主な内容とした「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が1月31日、国会に提出された。法案の目玉である雇用保険法の改正では、一定の特定受給資格者の給付日数を拡充するなど基本手当の充実を図っている。また、職業安定法の改正では、求人者、募集者について、採用時の条件があらかじめ示した条件と異なる場合等に、その内容を求職者に明示することを義務付けるなどしている。
法案の柱は、①雇用保険法、②職業安定法、③労働保険徴収法、④育児・介護休業法──の4法の改正となっている。
その主な内容は、雇用保険法の改正では、賃金日額の下限額を2460円に引き上げ、上限額については、受給資格者の年齢が①60歳以上65歳未満は1万5590円、②45歳以上60歳未満は1万6340円、③30歳以上45歳未満は1万4850円、④30歳未満は1万3370円──に引き上げる。
また、被保険者期間が1年以上5年未満の特定受給資格者の所定給付日数について、35歳以上45歳未満は150日(現行90日)、30歳以上35歳未満は120日(同90日)に拡充するとしている。
このほか、一定の特定理由離職者及び特定受給資格者を対象とした個別延長給付の創設、育児休業給付金の支給期間の延長(育児休業制度の改正を踏まえた改正)、移転費の支給対象に特定地方公共団体または職業紹介事業者の紹介により就職する場合を追加することなどが盛り込まれている。
次に、職業安定法の改正では、求人者、労働者の募集を行う者、労働者供給を受けようとする者は、求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体もしくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者または供給される労働者と労働契約を締結しようとする場合、これらの者に対して法第5条の3の規定により明示された労働条件等を変更する場合等は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する労働条件等を明示しなければならないこととする。
また、公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者が受理しないことができる求人申込みに、①労働に関する法律の規定であって政令で定めるものの違反に関し、法律に基づく処分、公表その他の措置が講じられた者(厚生労働省令で定める場合に限る)からの求人申込み、②暴力団員、法人であってその役員のうちに暴力団員があるもの、暴力団員がその事業活動を支配する者、に該当する者からの求人の申込み──などを追加するとしている。
労働保険徴収法の改正では、平成29年度から平成31年度までの各年度における雇用保険率について、一般の事業は1000分の13.5(うち失業等給付に係る率1000分の10)、農林水産業及び清酒製造業は1000分の15.5(同1000分の12)、建設業は1000分の16.5(同1000分の12)に引き下げる。
育児・介護休業法の改正では、子が1歳6ヵ月に達する日において育児休業をしている場合であって、当該子が1歳6ヵ月に達する後の期間について休業することが雇用の継続のため特に必要と認められるとして厚生労働省令で定める場合(編注:1歳6ヵ月に達した時点で保育所に入れない等)に該当するときは、子が2歳に達するまでの休業を申し出ることができるとしている。
なお、改正規定の施行期日は、雇用保険の賃金日額の上・下額の引上げは平成29年8月1日、特定受給資格者の所定給付日数の拡充、個別延長給付の創設は29年4月1日、育児休業給付金の改正は29年10月1日、移転費の改正は30年1月1日、職業安定法の労働条件等の明示については30年1月1日、求人申し込みの不受理については公布日から起算して3年以内で政令で定める日、労働保険徴収法の改正は29年4月1日、育児・介護休業法の改正は29年10月1日となっている。