国などが今後3年間に取り組む重点対策明記

政府は去る7月24日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下「大綱」)を閣議決定した。

昨年制定された「過労死等防止対策推進法」(平成26年11月1日施行)では、政府は、過労死等の防止対策を効果的に推進するため、大綱を定めなければならないと規定している(法第7条)。

大綱は、これに基づいて作成されたもので、作成に当たっては、同法により設置されている「過労死等防止対策推進協議会」(会長・岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)を開催し、その意見を聴くなどしている。

今回初めて作成された大綱は、同法の規定に基づき、(1)調査研究等、(2)啓発、(3)相談体制の整備等、(4)民間団体の活動に対する支援──の4つの対策を推進するため、今後おおむね3年間での取組みについて定めるものとなっている。

その主な内容をみると、まず、過労死等の防止のための基本的な考え方について、「過労死等は、その発生要因等は明らかでない部分が少なくなく、第一に実態解明のための調査研究が早急に行われることが重要」としている。そのうえで、過労死等防止が喫緊の課題であることから、調査研究の成果を待つことなく、対策に取り組むとしている。

次に、国が取り組む重点対策に関しては、関係行政機関が緊密に連携し、今後の調査研究の成果等を踏まえ、取り組むべき対策を検討し、それらを逐次反映していくとしている。

そして、対策の4本柱の具体的内容として、調査研究等については、①過労死等事案の分析、②疫学研究等、③過労死等の労働・社会分野の調査・分析、④結果の発信──をあげている。啓発については、①国民に向けた周知・啓発の実施、②大学・高等学校等における労働条件に関する啓発の実施、③長時間労働の削減のための周知・啓発の実施、④過重労働による健康障害の防止に関する周知・啓発の実施、⑤「働き方」の見直しに向けた企業への働きかけの実施及び年次有給休暇の取得促進、⑥メンタルヘルスケアに関する周知・啓発の実施、⑦職場のパワーハラスメントの予防・解決のための周知・啓発の実施、⑧商慣行等も踏まえた取組みの推進、⑨公務員に対する周知・啓発等の実施──をあげている。

また、相談体制の整備等については、①労働条件や健康管理に関する相談窓口の設置、②産業医等相談に応じる者に対する研修の実施、③労働衛生・人事労務関係者等に対する研修の実施、④公務員に対する相談体制の整備等──をあげている。さらに、民間団体の活動に対する支援では、①過労死等防止対策推進シンポジウムの開催、②シンポジウム以外の活動に対する支援──などをあげている。

このほか、国以外の主体が取り組む重点対策として、事業主は、国が行う対策に協力するとともに、労働者を雇用する者として責任をもって対策に取り組むよう努めることを明記している。

具体的には、経営幹部が先頭に立って取組み等を推進するよう努めること、また、産業保健スタッフや安全衛生スタッフが常駐する事業場では、相談や職場環境の改善の助言など、適切な役割を果たすよう事業主が環境整備を図るとともに、これらのスタッフがいない規模の事業場では、産業保健総合支援センターを活用して体制の整備を図るよう努めることをあげている。