同意等条件に法の時間規制外す制度創設を

労働政策審議会(会長・樋口美雄慶應義塾大学商学部教授)は先月13日、今後の労働時間法制について、一定の年収要件を満たす高度な専門業務を行う労働者にあっては、同意を条件に、労働基準法で定める労働時間や割増賃金の規定を適用除外することが適当──などとした建議を塩崎厚労相に行った。建議はこのほか、年次有給休暇の取得促進のため、年休の日数のうち年5日については、使用者が時季指定を行う仕組みの導入を提案している。厚生労働省は、建議を踏まえた労働基準法の改正案を今国会に提出する予定。
同審議会労働条件分科会(分科会長・岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、平成22年4月1日施行の改正労働基準法附則第3条による改正法施行3年経過後の検討規定、日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)で示された労働時間法制の見直しなどを受けて、一昨年の秋から約1年5ヵ月にわたって、今後の労働時間法制のあり方について検討を重ねてきた。

建議は、その検討結果に基づくもので、(1)働き過ぎ防止のための法制度の整備等、(2)フレックスタイム制の見直し、(3)裁量労働制の見直し、(4)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設、(5)その他(電子的手法による労働条件明示等)──について労働基準法改正などによる制度の見直しを提案している。

その主な内容をみると、長時間労働抑制策として、平成22年4月施行の改正労働基準法により引き上げられた月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率(50%以上)について、現在は適用が猶予されている中小企業に対しても、平成31年4月から適用するのが適当としている。

また、年次有給休暇の取得促進策として、年5日以上の年休取得が確実に進む仕組みの導入を提案している。

具体的には、年休付与日数が10日以上の労働者を対象に、年休日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならない法規定を設けるとしている。ただし、使用者による時季指定の日数は、労働者による時季指定および計画的付与が行われた場合は、それらの日数の合計を5日から差し引いた日数とし、それらの日数の合計が5日以上に達したときは、使用者による時季指定義務は無くなる仕組みとするとしている。

さらに、こうした新たな仕組みの導入に伴い、使用者に年休の管理簿の作成を義務付けるとしている。

次に、フレックスタイム制の見直しに関しては、清算期間の上限を現行の1ヵ月から3ヵ月に延長することが適当としている。そして、清算期間が1ヵ月を超え3ヵ月以内の場合にあっては、清算期間内の1ヵ月ごとに1週平均50時間を超えた労働時間については、当該月に割増賃金を支払うことが適当としている。

裁量労働制の見直しでは、企画業務型裁量労働制の対象業務に、①法人顧客の事業の運営に関する事項についての企画立案調査分析と一体的に行う商品やサービス内容に係る課題解決型提案営業の業務、②事業の運営に関する事項の実施の管理と、その実施状況の検証結果に基づく事業の運営に関する事項の企画立案調査分析を一体的に行う業務──の新たな類型を追加することが適当とした。

また、時間でなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、労働者ごとの同意を条件に、労働基準法の労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用除外する新制度の創設を提案している。

なお、具体的な対象業務は省令で規定するとしており、想定される業務として、金融商品の開発業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務などを例示した。また、年収要件に関しては、「1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る」ことを法定したうえで、1075万円を参考として省令で規定するとしている。

建議は、これらの制度改正の施行時期については、一部を除いて平成28年4月とするのが適当としている。

厚生労働省は、建議の内容に沿って労働基準法改正案(要綱)を作成し、同審議会への諮問・答申を経た後、改正法案を今国会に提出することとしている。