労働基準法等改正案は会期末処理で継続審議に
去る9月27日に閉会した今年の通常国会に提出されていた「労働基準法等の一部を改正する法律案」は、会期末処理により継続審議扱いとなった。同法律案は、今年4月3日に閣議決定され、同日国会に提出された。しかし、国会では質疑などはいっさい行われないまま会期末を迎え、継続審議となった。
法案は、①労働基準法の一部改正、②労働安全衛生法の一部改正、③労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正──を内容としている。
労働基準法の改正では、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率(50%以上)について、中小企業に対する適用猶予措置を廃止するとしている。また、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者を対象に、年休日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならないとする新たな仕組みを設けることとしている。
法案の目玉ともいえる労働時間規制の適用除外に関しては、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者が、高度な専門的知識を必要とする業務に従事する場合に、健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議などを要件として、労働基準法第4章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は適用しないとしている(高度プロフェッショナル制度の創設)。
このほか、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大、フレックスタイム制の清算期間の上限を1ヵ月から3ヵ月に延長することなどが盛り込まれている。
労働安全衛生法の改正では、高度プロフェッショナル制度の対象者について、事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間の合計が一定時間を超える場合には、事業者は、その労働者に対し、医師による面接指導を実施しなければならない──などとしている。
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正では、一定の要件に適合する企業全体を通じて設置する委員会(労働時間等設定改善企業委員会)で委員の5分の4以上の多数による決議によって、①月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度(代替休暇)、②年次有給休暇の時間単位取得、③年次有給休暇の計画的付与制度──に関する事項について決議が行われたときは、当該決議は、これらの事項に関する労使協定と同じ効果を有するものとする──などとしている。
なお、これら改正規定の施行期日は、中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止については平成31年4月1日、その他については平成28年4月1日となっている。
また、厚生労働省と法務省が共同提出した「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」も継続審議扱いとなった。同法律案は、外国人技能実習制度について、管理監督体制の強化を図るとともに、技能実習生の受入期間を最長5年間(現行3年間)に延長するなど新たな仕組みを導入することが主な内容。法案は、今年3月6日に閣議決定され、同日国会に提出された。そして、9月3日に衆議院本会議で審議入りし、その後、法案は同院法務委員会に付託されたが、質疑は行われなかった。