全国で23円から27円の引上げを提示

中央最低賃金審議会(会長・仁田道夫東京大学名誉教授)は7月26日、平成30年度地域別最低賃金改定の目安について、ランクごとの引上げ額をAランク27円、Bランク26円、Cランク25円、Dランク23円とする答申をとりまとめ、加藤厚労相に提出した。厚生労働省によると、目安が示した引上げ額の全国加重平均は26円となる。今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会で引上げ額が審議され、10月初めには改定後の最低賃金が発効する見通し。なお、目安通りに最低賃金が改定された場合、最高額は東京都の985円となる。

地域別最低賃金は、各都道府県ごとに、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮するとともに、生活保護施策との整合性に配慮して決定することになっている。

地域別最低賃金は毎年見直しが行われており、額の改定にあたっては、中央最低賃金審議会が改定の目安を各都道府県の地方最低賃金審議会に示す方式がとられている。

今年度の目安をめぐる中央最低賃金審議会の審議は、6月26日に厚生労働省が同審議会に目安の調査審議を諮問し始まった。同審議会は、例年通り目安に関する小委員会を設け、4回にわたって審議を行った。

小委員会では、労働者側委員は、①当面目指すべき水準を意識した目安を議論すべきであり、まずは、800円以下の地域をなくすことが急務である、②その上で、トップランナーと言えるAランクは1000円への到達を目指すべきであり、これらの到達時期については、経済環境にも配慮しつつ、2020年を目途にすべきである、③地方最低賃金審議会の自主性発揮を促す観点からも、中央最低賃金審議会において最低賃金の地域間格差の是正に向けた議論を行い、ランク間差を最小限にとどめるとともに、最高額と最低額の比率の更なる改善を図っていく必要がある、④高卒初任給や非正規労働者における時給の実態も勘案すべきである──などを主張した。

一方、使用者側委員は、「急激な原油価格の上昇、原材料価格の増大、労働力の確保が困難な状況による人件費の高騰など、経営コストの上昇圧力が非常に強く、中小企業を取り巻く経営環境は中小企業景況調査や法人企業統計の結果をはじめ、総じて厳しい環境にあり、中小企業の経営者は賃金支払能力が乏しい中で深刻な人手不足に対処するため、実力以上の賃上げを強いられている」との認識を示した。

そして、「最低賃金は全ての企業・使用者にあまねく適用され、最低賃金を下回る場合は罰則の対象になることから、通常の賃上げとは性格が異なるとともに、政府による各種支援策の効果は未だ十分に上がっているとは言えず、近年の大幅な引上げによる企業経営への影響を十分に考慮した審議をすべきである」などと主張した。

その結果、30年度地域別最低賃金改定の目安については、その額に関し意見の一致をみるに至らず、昨年同様、目安に関する公益委員見解及び目安に関する小委員会報告を地方最低賃金審議会に提示する答申内容となった。

公益委員見解は、(1)都道府県の各ランクごとの引上げ額の目安は、Aランク27円、Bランク26円、Cランク25円、Dランク23円とする、(2)地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、目安を十分に参酌することを強く期待する、(3)生活保護水準と最低賃金との比較では、来年度以降の目安審議においても、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないかを確認することが適当と考える──というもの。

今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会において最低賃金改定の審議が行われ、早い地域では10月初めには新しい最低賃金が発効することになる。

厚生労働省によると、今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は26円(昨年度は25円)となり、最低賃金が時給で決まるようになった平成14年度以降で最高額となる引上げになる。

また、目安額通りの引上げが行われた場合、最も高い最低賃金は東京の985円、一方、最も低い最低賃金は高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の760円となる。