全国で21円から25円の引上げを提示
中央最低賃金審議会(会長・仁田道夫東京大学名誉教授)は7月28日、平成28年度地域別最低賃金改定の目安について、ランクごとの引上げ額をAランク25円、Bランク24円、Cランク22円、Dランク21円とする答申をとりまとめ、塩崎厚労相に提出した。厚生労働省によると、目安が示した引上げ額の全国加重平均は24円となる。今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会で引上げ額が審議され、10月初めには改定後の最低賃金が発効する見通し。なお、目安通りに最低賃金が改定された場合、最高額は東京都の932円となる。
地域別最低賃金は、各都道府県ごとに、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮するとともに、生活保護施策との整合性に配慮して決定することになっている。
地域別最低賃金は毎年見直しが行われており、額の改定にあたっては、中央最低賃金審議会が改定の目安を各都道府県の地方最低賃金審議会に示す方式がとられている。
今年度の目安をめぐる中央最低賃金審議会の審議は、6月14日に厚生労働省が同審議会に目安の調査審議を諮問し始まった。同審議会は、例年通り目安に関する小委員会を設け、4回にわたって審議を行った。
小委員会では、労働者側委員は、①目安制度の目的が、地方最低賃金審議会が地域別最低賃金を決定する際の基本的事項や賃金水準の全国的整合性を図ることであること等を踏まえれば、地域間格差を拡大する目安を示すことは不適当であり、その縮減をはかることが重要、②家族の生活に必要な賃金水準を確保するとともに、所得格差に歯止めをかける観点からは、現在の地域別最低賃金の水準は不十分であり、特に地域における労働者の生計費と賃金を重視しつつ、雇用戦略対話の全国で最低でも800円、全国平均1000円という目標達成へ向け、早期にその道筋を示す目安額とすべきである──などを主張した。
一方、使用者側委員は、近年の最低賃金が、景気や経営の実態とは関係なく、いわゆる「時々の事情」によって大幅な引き上げが行われ続けてきたとの認識を示し、中小零細企業の経営体質を強化する支援策が拡充されることなく、最低賃金を大幅に引き上げることへの懸念を表明した。
そのうえで、「今年度の最低賃金の決定にあたっては、最低賃金法の原則である、地域における労働者の生計費、賃金及び通常の事業の賃金支払能力の3要素に基づき、最低賃金引上げの前提条件である名目GDP成長率、中小企業や小規模事業者の生産性向上に向けた支援の状況、取引条件の改善等に関する状況を踏まえながら、各種統計データを重視した議論を行うべきである」と主張した。
その結果、28年度地域別最低賃金改定の目安については、その額に関し意見の一致をみるに至らず、昨年同様、目安に関する公益委員見解及び小委員会報告を地方最低賃金審議会に提示する答申内容となった。
公益委員見解は、(1)都道府県の各ランクごとの引上げ額の目安は、Aランク25円、Bランク24円、Cランク22円、Dランク21円とする、(2)地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、目安を十分に参酌することを強く期待する、(3)生活保護水準と最低賃金との比較では、来年度以降の目安審議においても、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないかを確認することが適当と考える──というもの。
今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会において最低賃額改定の審議が行われ、早い地域では10月初めには新しい最低賃金が発効することになる。
厚生労働省によると、今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は24円(昨年度は18円)となり、目安額通りに最低賃金が決定されれば、最低賃金が時給で決まるようになった平成14年以降で最高額となる引上げになる。
また、目安額通りの引上げが行われた場合、最も高い最低賃金は東京の932円、一方、最も低い最低賃金は鳥取、高知、宮崎、沖縄の714円となる。