働き方改革を進め生産性向上の好循環実現を

内閣府は、「平成29年度年次経済財政報告─技術革新と働き方改革がもたらす新たな成長─」(29年度経済財政白書)をまとめた。白書は、緩やかな回復基調が続く日本経済の現状と課題について分析を行うとともに、働き方改革や技術革新が経済や国民生活に及ぼし得る影響について分析している。

その中で、同一労働同一賃金の取組みや長時間労働是正等の働き方改革を進めることは、労働者の技能向上や企業の設備投資を促すことで生産性を高めることが期待されるほか、労働参加率を高め、多様な労働者の参加を実現することにより、相対的に所得の低い層や子育て世帯等の所得の底上げにつながることが期待されるとした。また、共働き世帯の増加や長時間労働の是正・柔軟な働き方に伴う余暇時間の拡大は、それぞれ家事を代替する消費やレジャー活動に伴う支出の増加に寄与する可能性も考えられると分析している。

そのうえで、今後働き方改革を進めるに当たっての課題として、①働き方の変化を生産性の向上の好循環に着実につなげるための取組み、②多様な人材の活用のための取組み、③転職が不利にならない柔軟な労働市場の整備、④労働法制や雇用ルールの順守を担保し、労働者の権利を保護するための取組み──の4つを掲げている。そして、これらの課題について、具体的な対応のあり方を論じている。

まず、生産性向上に向けた投資の強化とマネジメントの見直しについて、長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入は、労働者の勤労意欲や定着率を高めるとともに、業務効率化のインセンティブを増加させ、生産性向上に寄与すると指摘。その際、公正な評価制度の策定、管理職による仕事量や進め方、柔軟な業務分担の見直し、フレックスタイム制度の併用などといったマネジメントの見直しを並行して行うことは、生産性向上の程度をさらに高めるとしている。そして、生産性向上の成果を処遇の改善という形で労働者にも還元していくことが期待され、勤労意欲の向上や定着率の上昇を通じて、さらに生産性を高めるといった好循環の実現が望まれるとした。

次に、多様な人材を活用するための取組みについて、フレックスタイムやテレワーク制度の導入は、障害者や高齢者、子育てや介護等に係る者などの労働参加を進めるにあたり重要とし、制度の実施等を進めるには、職務範囲の設定や労働者の裁量の確保も含め、より難しいマネジメントが求められると指摘。一方で、こうしたマネジメントにより、長時間労働を是正し多様な働き方を同時に取り入れることができれば、労働生産性を上昇させることが可能としている。

また、柔軟な労働市場に対応した人材評価制度に関しては、転職先の企業がそれまでの労働者の経験を評価するには、職業能力・職場情報の見える化を図ることが重要とし、転職前の職場のキャリアを継続的な人材評価につなげる取組みとしては、2016年度末段階で約175万人が取得しているジョブ・カードが転職後のキャリア形成に有用としている。