事業場外みなし制の活用条件を明確化へ

厚生労働省は、働き方改革を進めるうえで重要となる柔軟な働き方がしやすい環境整備として、在宅就労(テレワーク)に関する現行ガイドラインを刷新するため、「柔軟な働き方に関する検討会」(座長・松村茂東北芸術工科大学教授、日本テレワーク学会会長)を立ち上げた。検討会では、テレワークに関する現在の2種類のガイドライン改定に向けた検討を行うほか、副業・兼業の推進に向けたガイドラインの制定も検討する。また、在宅勤務における事業場外労働みなし労働時間制の活用条件の明確化も検討する。

 働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)では、柔軟な働き方がしやすい環境整備として、テレワーク(情報通信技術(ICT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)、副業・兼業の普及を図っていくことが重要と位置づけ、これらの普及が長時間労働を招かないよう整理し、ガイドラインの制定など実効性のある政策手段を講じて普及を加速させていくことを明記している。

 総務省の「地方創生と企業におけるICT利活用に関する調査研究」(平成27年)によると、テレワークのための制度や仕組みを導入している企業の割合は7.9%と1割に満たない。また、公益財団法人連合総合生活開発研究所が行った第33回「勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査」(平成29年4月実施)の結果によると、在宅勤務型テレワークで働いている者の割合は1.1%にとどまっている。

 厚生労働省は、2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機にテレワークの普及を後押しするため、今年から2020年まで毎年7月24日を「テレワーク・デイ」と定めて、テレワークを活用した働き方改革の国民運動を展開している。

 また、同省ではこれまで、テレワークに関して、雇用型テレワークのガイドライン(平成16年3月策定、20年7月改定)及び非雇用型テレワークのガイドライン(平成12年6月策定、22年3月改定)を策定している。今回の検討会は、この2種類のガイドラインの改定を中心に議論することになっている。

 雇用型テレワークのガイドライン改定の検討では、現行ガイドラインが対象としてる在宅勤務に加えて、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務などの在宅勤務以外の形態のテレワークの活用方法を追加する。そして、テレワークにおける労働時間の管理に関しては、①通常の労働時間制度下で、労働時間を適正に把握できる場合の明確化、②通常の労働時間制度やフレックスタイム制において、1日の一部分をテレワークで働く際の移動時間の扱い、③フレックスタイム制や裁量労働制はテレワークでも活用できることの明示──などをガイドラインに盛り込むことを検討する予定。

 さらに、在宅勤務における事業場外みなし労働時間制の適用基準として示されている行政解釈「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について」(平16・3・5 基発第0305001号、平20・7・28 基発第0728002号)について、スマートフォンなどの普及により、その活用が困難と考えられている可能性があるため、活用できる条件を明確化することも検討する。

 一方、非雇用型テレワークのガイドラインの改定では、働き手と発注者の契約だけでなく、仲介事業者が一旦受注して働き手に再発注する際にもガイドラインが適用されることを明確化すること、また、仲介手数料や著作権の取扱いの明示など仲介事業者に求められるルールの明確化などが検討課題に上がっている。

 このほか、新たに制定する副業・兼業の推進に向けたガイドラインの内容については、就業規則等において本業への労務提供や事業運営、会社の信用・評価に支障が生じる場合など以外は、合理的な理由なく副業・兼業を制限できないことをルールとして明確化し、副業・兼業をする者に対する労働時間や健康管理の手法などを盛り込む方向で検討を進める方針。

 同省では、11月以降は検討会を毎月2回程度開催し、来年3月までに検討結果を取りまとめ、それに基づきガイドラインの改定・制定を行い、以後、その周知徹底を図ることとしている。