事業主に相談体制の整備等を義務付ける
厚生労働省は2月14日、労働政策審議会(会長・樋口美雄(独)労働政策研究・研修機構理事長)に対し、企業にパワーハラスメントの防止措置を義務付けることを盛り込んだ女性活躍推進法等の改正案要綱を諮問し、同審議会はこれを了承した。それによると、事業主に対して、パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務(相談体制の整備等)を新設する。同省は、法案を今国会に提出し、会期中の成立を目指す方針。なお、パワハラ防止義務に関する規定は、早ければ来春にも施行の予定(中小企業は最長3年間は努力義務)。
法案要綱によると、今回の法案は、①女性活躍推進法、②労働施策総合推進法、③男女雇用機会均等法、④労働者派遣法、⑤育児・介護休業法──の5本の法律を一括して改正する内容となっている。
法案の目玉となるパワーハラスメント(以下「パワハラ」)防止対策は、労働施策総合推進法の改正により法制化する。
その具体的内容をみると、国の講ずべき施策に、「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進ために必要な施策を充実すること」を規定する。
次に、事業主に対して、パワハラ防止のための雇用管理上の措置(相談体制の整備等)を講じることを義務付ける。また、事業主は、労働者がパワハラの相談を行ったこと及び事業主によるパワハラの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由とする解雇、その他の不利益取扱いをしてはならないとした。
併せて、措置の適切かつ有効な実施を図るため、厚生労働大臣は必要な指針を定めるとしている。
さらに、パワハラに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停の対象とする規定を設けるとしている。
また、厚生労働大臣は、パワハラ防止の措置義務等に違反している事業主に対し、都道府県労働局長の紛争解決援助による勧告をした場合で、勧告を受けた者が勧告に従わなかったときは、それを公表できるとしている。加えて、厚生労働大臣は、事業主からパワハラ防止の措置義務等の施行に関し、必要な事項についての報告を求めることができることとし、この報告をしない者あるいは虚偽の報告をした者には罰則(20万円以下の過料)を科すとしている。
男女雇用機会均等法の改正では、事業主は、労働者が職場におけるセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント(妊娠、出産等に関する言動に起因する問題)に関する相談を行ったことまたは事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益取扱いをしてはならないとしている。
同じく、育児・介護休業法の改正では、職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止規定を設けることとした。
なお、改正法の施行期日は、パワハラ対策の国の施策については公布日、パワハラ対策のその他の部分、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の改正は公布日から1年以内となっている。ただし、事業主のパワハラ防止の措置義務は、中小企業については公布日から3年以内は努力義務とする経過措置を設けている。
厚生労働省は、法案を今国会に提出し、会期中の成立を期すことにしている。