事業主に対し雇用管理上の措置を法律で義務化を
労働政策審議会(会長・樋口美雄(独)労働政策研究・研修機構理事長)は12月14日、根本厚労相に対し、職場のパワーハラスメント防止対策の強化策として、事業主は、労働者がパワーハラスメントを受けることを防止するための措置を講じることを法律で義務化するよう建議した。
近年、職場のパワーハラスメント(以下「職場のパワハラ」)に関する社会的関心が高まっている。厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」によれば、「嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」ことによる精神障害の労災認定件数は、平成28年度が74件、29年度が88件と増えている。また、29年度に都道府県労働局に寄せられた相談件数の内訳で最も多いのは「いじめ・嫌がらせ」に関するもので全体の約4分の1を占めている。こうした中で、職場のパワハラ防止は喫緊の課題であり、対策の強化が求められている。
建議は、職場のパワハラ防止について、「事業主に対し、その雇用する労働者が自社の労働者等(役員を含む)からパワーハラスメントを受けることを防止するための雇用管理上の措置を義務付けることが適当である」とした。
そして、職場のパワハラの定義については、①優越的な関係に基づく、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、③労働者の就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)──の3要素を満たすものとした。
また、事業主に対して措置を法律で義務付けるに当たっては、措置の具体的内容等を示す指針を策定することが適当とした。加えて、取引先等の労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為については、指針等で望ましい取組みを明確にすることが適当とした。
さらに、男女雇用機会均等法に基づく職場のセクシュアルハラスメント防止対策と同様に、職場のパワハラに関する紛争解決のための調停制度等や、助言や指導等の履行確保のための措置について、併せて法律で規定することが適当としている。
指針で示す事項としては、上記の定義に関しては、①「3要素」の具体的内容、②職場のパワハラの典型的な類型、パワーハラスメントに該当する例、該当しない例、③「職場」とは業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については「職場」に含まれること、④業務上の適正な範囲内の指導については職場のパワハラに当たらないこと──などを挙げている。
措置の具体的内容に関しては、①事業主における、職場のパワハラがあってはならない旨の方針の明確化や、当該行為が確認された場合には厳正に対処する旨の方針やその対処の内容についての就業規則等への規定、それらの周知・啓発の実施、②相談等に適切に対応するために必要な体制の整備、③事後の迅速、適切な対応──などを示している。
同省は、建議の内容を踏まえて法律案要綱を作成し、同審議会への諮問・答申の後、今年の通常国会に法案を提出する予定。