事務所、飲食店等は屋内原則禁煙の法案提出予定

厚生労働省は、受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案の骨格を取りまとめた。今国会に改正案を提出し成立を目指す。

受動喫煙防止について現行の健康増進法は、学校、病院、事務所、官公庁施設、飲食店など多数の者が利用する施設を管理する者に対し、これらを利用する者の受動喫煙を防止するため必要な措置を講ずる努力義務規定を置いている(法第25条)。同規定は、平成15年5月に施行され、すでに約15年経過している。また、平成27年6月施行の改正労働安全衛生法では、事業者に対し、労働者の受動喫煙を防止するため適切な措置を講ずる努力義務を課している(法第68条の2)。

同省がまとめた「平成28年労働安全衛生調査(実態調査)」の結果では、職場での受動喫煙に関して、受動喫煙があるとする者の割合は34.7%、また、職場での受動喫煙が「不快に感じること、体調が悪くなることがある」とする者の割合は、喫煙をしない者では21.2%となっている。

このように、職場や公共の場での受動喫煙は依然として多く、「努力義務」による取組みには限界がある。こうしたことから同省では昨年来、多くの人が利用する施設等における受動喫煙の防止係る対策を強化するため、施設等の区分に応じ、一定の場所を除き喫煙を禁止する法整備を行う方針を打ち出していた。

当初の予定では、昨年の国会に健康増進法改正案を提出して、2019年9月のラグビーワールドカップまでの施行を目指していた。しかし、法案の内容をめぐり政府・与党内の調整がつかなかったため、提出は見送りとなっていた。

今回まとめられた改正案の骨格は、「望まない受動喫煙」をなくすという基本的考え方の下、①医療施設、小中高、大学等や行政機関は、敷地内禁煙(屋外に喫煙場所を設置することは可)、②上記以外の施設(事務所、飲食店、ホテル、老人福祉施設、運動施設等)は、屋内原則禁煙とし、喫煙専用室内でのみ喫煙を可能とする(住宅、旅館、ホテルの客室等私的な空間は適用除外)──としている。

ただし、既存の飲食店のうち経営規模が小さい事業者が運営するものに対する措置として、店舗面積が一定規模以下のものについては、別に法律で定める日までは、「喫煙」「分煙」の掲示により喫煙可能としている。この場合、20歳未満(客及び従業員)の立入禁止等を行うこととする。なお、喫煙専用室と同等の分煙措置を講じている場合は、非喫煙スペースへの20歳未満の立入りは認めるとしている。

また、加熱式たばこについては、その煙にニコチン等の有害物質が含まれていることは明らかである一方、現時点の科学的知見では、受動喫煙による健康影響は明らかでないことから、当分の間、喫煙専用室または加熱式たばこ専用の喫煙室(喫煙専用室と同様に、室外への煙の流出防止措置を講じたもの)内でのみ喫煙を可能とした。

なお、改正法の施行期日については、施設の類型・場所に応じ、施行に必要な準備期間を考慮し、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに段階的に施行するとしている。