一定の高度専門職対象に新たな労働時間制度創設

中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予を廃止すること、一定額以上の年収がある高度な専門業務に就く労働者について、本人の同意などを要件として、労働時間の規制を適用除外とすることなどを主な内容とした「労働基準法等の一部を改正する法律案」が先月3日、国会に提出された。

法案は、①労働基準法の一部改正、②労働安全衛生法の一部改正、③労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正──の3本柱から成っている。

その主な内容は、労働基準法の改正では、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率(50%以上)について、中小企業に対する適用猶予措置を廃止するとしている。また、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者を対象に、年休日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならないとする新たな仕組みを設ける。ただし、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年休日数分については時季指定は要しないとしている。

今回の法案の目玉である労働時間規制の適用除外に関しては、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者が、高度な専門的知識を必要とする業務に従事する場合に、健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議などを要件として、労働基準法第4章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は適用しないとしている(高度プロフェッショナル制度の創設)。なお、具体的な対象業務や年収要件は、改正法成立後に厚生労働省
令で定めることとなっており、年収要件については、少なくとも1000万円以上とすることが予定されている。

このほか、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大、フレックスタイム制の清算期間の上限を1ヵ月から3ヵ月に延長することなどが盛り込まれている(詳細は本誌第1848号の特集記事参照)。

次に、労働安全衛生法の改正では、高度プロフェッショナル制度の対象者について、事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間の合計が一定時間を超える場合には、事業者は、その労働者に対し、医師による面接指導を実施しなければならないとしている。なお、面接指導の対象となる「一定時間」については、厚生労働省令で定めることとなっており、1週当たり40時間を超える時間が月100時間を超えた場合とすることが予定されている。

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正では、一定の要件に適合する企業全体を通じて設置する委員会(労働時間等設定改善企業委員会)で委員の5分の4以上の多数による決議によって、①月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度(代替休暇)、②年次有給休暇の時間単位取得、③年次有給休暇の計画的付与制度──に関する事項について決議が行われたときは、当該決議は、これらの事項に関する労使協定と同じ効果を有するものとするとしている。

なお、これら改正法の施行期日は、中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止については平成31年4月1日、その他については平成28年4月1日となっている。