一定の特定受給資格者の給付日数を拡充
雇用保険制度の見直しを検討していた労働政策審議会の部会が報告書をまとめた。報告書は、基本手当の充実として、特定受給資格者のうち被保険者期間が1年以上5年未満の者の所定給付日数を「30歳~35歳未満」は120日(現行90日)、「35歳~45歳未満」は150日(同90日)に拡充するとしている。また、雇用保険料率について、失業等給付に係る原則の率(1000分の12)を平成29年度から3年間は1000分の10に引き下げるとしている。厚生労働省は、報告書の内容を踏まえ、今年の通常国会に関連法案を提出する予定。
報告書は、雇用保険制度等について、①基本手当の水準及び平成28年度末までの暫定措置、②就職促進給付、③教育訓練給付、④育児休業給付、⑤財政運営──などに関して見直しの方向性を示している。
まず、賃金日額について、最新の賃金分布を踏まえ、法定の額を見直し、上限額については、「30歳未満」1万3370円(現行1万2740円)、「30歳以上45歳未満」1万4850円(同1万4150円)、「45歳以上60歳未満」1万6340円(同1万5550円)、「60歳以上65歳未満」1万5590円(同1万4860円)に引き上げ、下限額については、2460円(同2290円)に引き上げるとしている。
また、その期限が平成28年度末までとなっている失業等給付の暫定措置(個別延長給付、雇止め等により離職した有期契約労働者等の給付日数の充実、常用就職支度手当の支給対象者の追加)については、期限をもって一旦終了すべきとした。
給付日数については、特定受給資格者(倒産・解雇などの理由により離職した者)のうち被保険者であった期間が1年以上5年未満である30歳以上35歳未満の者の所定給付日数を120日(現行90日)、35歳以上45歳未満については150日(同90日)に拡充すべきとしている。また、雇止めにより離職した有期雇用労働者の所定給付日数を特定受給資格者と同様とする暫定措置を5年間実施するとしている。
次に、就職促進給付に関しては、住居移転を伴う就職を積極的に支援するため、職業紹介事業者または特定地方公共団体による紹介により住居・居所を変更する必要がある場合も移転費の対象とすべきとしている。さらに、早期の再就職を実現する観点から、移転費及び広域求職活動費を給付制限期間内であっても支給できるようにすべきとしている。
教育訓練給付に関しては、専門実践教育訓練給付の給付率を40%(上乗せの場合は最大60%)から50%(上乗せの場合は最大70%)に引き上げ、上限額について、32万円から40万円に引き上げるとしている。あわせて、専門実践教育訓練を受講している45歳未満の若年離職者に支給される教育訓練支援給付金の額を基本手当日額の80%(現行50%)に引き上げるとしている。
財政運営に関しては、雇用保険料率について、平成29年度から31年度までの3年間に限り、失業等給付に係る原則の率(1000分の12)を1000分の10に引下げ、労使の負担軽減を行うべきであるとした。
なお、これによって、平成29年度の雇用保険料率は、法定の率を改正することなく失業等給付分についてはプラスマイナス1000分の4の範囲、雇用保険二事業分についてはマイナス1000分の0.5の範囲で厚生労働大臣が変更できる仕組み(弾力条項の発動)により、一般の事業が1000分の9(28年度1000分の11)、農林水産・清酒製造業が1000分の11(同1000分の13)、建設事業が1000分の12(同1000分の14)となる。