パワハラ事案は第三者から聴取行い判断
厚生労働省は、平成31年度の労災補償業務運営上の留意事項を都道府県労働局長に通達した。それによると、労災請求を端緒とする監督指導対象の過労死等事案における労働時間の把握では、監督担当部署が事業場から入手した労働時間集計表等を活用しつつ、必要な調査を行い、労働時間を特定するとしている。また、パワハラ事案については、当事者の事業場内での指揮命令系統などを把握し、客観的な第三者から聴取等を行い、業務の範囲を逸脱した言動の有無を確認してパワハラに該当するか否か判断するとしている。
同省では、新年度の労災補償業務運営に当たっての重点事項を毎年度末に策定し、都道府県労働局に指示している。
31年度は、①過労死等事案などの的確な労災認定、②迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底、③労災補償業務の効率化と人材育成──を重点的に推進するとしている。
具体的には、まず、過労死等事案に係る的確な労災認定に向けた調査上の留意点として、労働時間の的確な把握を挙げている。そのためには、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等を踏まえて、事実関係を整理・確認し、始業・終業時刻及び休憩時間を詳細に特定したうえで、実労働時間を的確に把握するとしている。
なお、その際、休憩時間とされている時間であっても、黙示も含む使用者の指揮命令に基づき労働者が業務に従事している、または手待時間と同様の実態が認められるなど労働からの解放が保障されていない場合には、労働時間として算入するとしている。
また、労災請求を端緒とする監督指導の対象となる事案については、監督担当部署が事業場から入手した労働時間集計表及び疎明資料を活用しつつ、必要な調査を行い、監督担当部署と協議を行ったうえで労働時間を特定するとしている。
脳・心臓疾患における業務の過重性の評価に当たっては、疾病を発症した労働者と同程度の年齢、経験等を有する健康な状態にある者のほか、基礎疾患を有していても日常業務を支障なく遂行できる同僚または同種の労働者にとっても、特に過重な業務であったか否かという観点からの検討を行うとしている。
次に、精神障害における嫌がらせ、いじめ(パワハラ)の事実認定に関して、請求人が嫌がらせ、いじめを主張する事案については、関係者が相反する主張をする場合があるため、当事者の事業場内における役割、指揮命令系統を把握したうえで、できる限り客観的な第三者から聴取等を行い、業務指導の範囲を逸脱した言動等の有無について確認を行ったうえで、嫌がらせ、いじめに該当するか否かの判断を行うとしている。