ガイドラインは通勤費や職務関連手当等に限定を

経団連(榊原定征会長)は、「同一労働同一賃金の実現に向けて」と題した提言をまとめた。提言は、我が国の雇用慣行に留意した日本型同一労働同一賃金を目指していく観点から、日欧の雇用慣行や人事賃金制度の相違を踏まえ、基本的な考え方及び非正規従業員の待遇改善に向けた具体策を示すものとなっている。

それによると、まず、日本型同一労働同一賃金のあり方として、不合理な待遇差について、職務内容以外のさまざまな事情も総合して不合理かどうかを判断する現行法の基本的考え方を維持すべきとしている。

他方、現行法には、正規従業員と非正規従業員の人事賃金制度が異なっているため、非正規従業員が待遇差の理由を理解しづらいこと、非正規従業員が司法に救済を求めにくいなどの課題があると指摘。

そして、これらを踏まえ、日本型同一労働同一賃金を、①「職務内容や、仕事、役割、貢献度の発揮期待(人事活用の仕方)など、さまざまな要素を総合的に勘案し、自社にとって同一労働と評価され場合に、同じ賃金を払うこと」を基本とする、②ガイドラインの策定や法制度の見直し、簡易な救済制度の利活用により、同一企業における正規従業員と非正規従業員の不合理な待遇差を禁止する現行ルールの実効性を高める──と捉え、その実現に向けて取り組むべきであるとしている。

そのうえで、日本型同一労働同一賃金の実現に向けて求められる取組みとして、ガイドラインの策定と活用、3法(労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法)の一括改正、簡易な救済制度の利活用等──を掲げている。

その中で、ガイドラインの策定と活用については、今後策定するガイドラインは、個別労使が明確に不合理と認識できる取扱いや改善が求められる取扱いに絞ったうえで、企業の労務管理における自主点検に資するものを例示することが適当とした。具体的には、①通勤費や食堂、更衣室の利用など非正規労働者にとって不満がもたれやすい事項であって自主的な話合いを促す対象となるもの、②職務関連手当など、企業労使にとって不合理か否かを明確に判断できるもの──に限るべきとしている。