「規制の導入は3雇用形態一緒に」などの意見が
「同一労働同一賃金」の実現に向けた具体的方策について、昨年3月から検討を行っていた厚生労働省の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」(座長・柳川範之東京大学大学院経済学研究科教授)が報告書をまとめた。
同検討会では、日本の現状や現行制度、欧州諸国の法制度・運用等、ガイドライン作成、必要な法整備──などについて検討し、欧州諸国の検討結果、日本におけるポイント、ガイドラインの位置づけなどについては、昨年12月に中間報告をまとめた。なお、中間報告と同時期に、政府の「働き方改革実現会議」(議長・安倍首相)が、「同一労働同一賃金ガイドライン案」をまとめている(本誌第1915号~第1917号参照)。
今回の報告は、同検討会が今年2月以降に行った同一労働同一賃金の法整備に向けた議論を中心に、法整備に関する各論点について踏まえるべき議論の前提、ありうる選択肢やその利害得失などを幅広く挙げ、それを「論点整理」の形で示している。
報告書は、「パートタイム労働者及び有期雇用労働者」と「派遣労働者」について、それぞれ、法制度における司法判断の根拠規定の整備、法制度における説明義務の整備、履行確保の在り方──などについて「論点」を掲げ、各論点に関して検討会で出された意見を列挙している。さらに、規制の導入(改正法の施行)に関して、全体の「時間軸」の在り方、法整備とガイドライン案の関係性(法的根拠・法的効力)を論点に挙げた。
その中から、法制の枠組みの在り方に関するものをみると、「非正規雇用労働者の中でも、不本意非正規などの不満を持っている者が多いのはパートタイム労働者以上に有期契約労働者である。様々な法制化をする際に、労働契約法に盛り込むのか、有期も含めてパートタイム労働法を再構成するのか議論が必要」、「労働契約法とパートタイム労働法の法形式の在り方については、規制の考え方や内容をどう変更するかを踏まえて議論する必要がある」、「パートと有期を一緒のものとして捉えるかについては、日本の労働市場や働き方をどのようにグループ分けし、それぞれにどのような働き方を期待するかということの根幹に関わる論点であるため、この点を慎重に考慮し、規制の枠組みを検討することが必要」などの意見が出された。
また、全体の「時間軸」の在り方に関しては、「賃金表がもともと整備されていない中小企業、非正規比率が高い企業について考慮する必要がある」、「派遣だけ規制が弱ければ派遣に流れてしまうから、規制の導入は3雇用形態一緒にすべき。一括改正に向けて施行までどう時間をとるか、現在の問題状況や景気動向等も考慮に入れて判断すべき」、「規制の導入は3雇用形態間である程度足並みを揃えることが重要。派遣についても、職務待遇確保法の「3年以内」というタイムリミットだけにとらわれるのではなく、非正規全体として均衡の実効性を確保するために必要な規制を検討すべき」などの意見が出されている。
法整備とガイドライン案の関係に関しては、「ガイドラインが法的効力を持つということになるためには、きちんとした立法プロセス、特に労働法制はずっと労働政策審議会で議論を重ねられてきたものなので、そこで議論を尽くすことが必要」といった意見も出された。