「いじめ・嫌がらせ」に関する争い5年連続最多

厚生労働省は、「平成28年度個別労働紛争解決制度施行状況」をまとめた。それによると、民事上の個別労働紛争の相談件数、都道府県労働局長による助言・指導の申出件数、紛争調整委員会によるあっせん申請件数のいずれも、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが最も多くなっている。

同省では、労働関係についての個々の労働者と事業主間の紛争を円満に解決するための制度として、「個別労働紛争解決制度」を設けている。そして、制度の効果的な運用を図るために、ワンストップサービスの相談コーナーを全国380ヵ所設置し、相談者が同コーナーに相談の申出を行い、それが民事的なトラブルに発展した場合には、解決の手段として、相談者の求めに応じて都道府県労働局長による助言・指導、また、紛争調整委員会によるあっせんを行う仕組みとなっている。

同省のまとめによると、28年度に寄せられた相談件数は113万741件で前年度(103万4936件)と比べ9.3%増加した(28年度から、都道府県労働局の組織見直しにより、これまで「雇用均等室」で対応していた男女雇用機会均等法等に関しても一体的に労働相談として対応することになったため、それらの相談件数も計上している)。そのうち、労働基準法等の法違反を伴わない解雇や労働条件の引下げなどの民事上の相談件数は25万5460件で前年度(24万5125件)と比べ4.2%増加となった。

民事上の相談内容の内訳(内訳が複数にまたがる事案があるため、合計は前記件数と一致しない)をみると、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが7万917件(全体の22.8%)と最も多く、次いで、「自己都合退職」4万364件(同13.0%)、「その他の労働条件」3万9096件(同12.6%)、「解雇」3万6760件(同11.8%)、「労働条件の引下げ」2万7723件(同8.9%)、「退職勧奨」2万1901件(同7.1%)と続いている。

「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、24年度に「解雇」に関する相談件数を上回り初めてトップとなり、5年連続でのトップとなった。

次に、都道府県労働局長による助言・指導についてみると、申出件数は8976件となっており、前年度(8925件)と比べ0.6%増加した。申出内容の内訳(複数にまたがる事案があるため、合計は前記件数と一致しない)は、「いじめ・嫌がらせ」が2206件(全体の22.3%)と最も多く、次いで、「その他の労働条件」1659件(同16.8%)、「解雇」1022件(同10.3%)、「自己都合退職」948件(同9.6%)、「労働条件の引下げ」877件(同8.9%)と続いている。

なお、助言・指導の申出があったものの中で、28年度内に処理したものは8912件となっており、このうち処理期間の目標である1ヵ月以内に処理したものが8800件(98.7%)となった。

また、紛争調整委員会によるあっせんについてみると、申請受理件数は5123件となっており、前年度(4775件)と比べ7.3%増加した。申請内容の内訳(複数にまたがる事案があるため、合計は前記件数と一致しない)は、「いじめ・嫌がらせ」が1643件(全体の29.0%)と最も多く、次いで、「解雇」1242件(同21.9%)、「その他の労働条件」679件(同12.0%)、「雇止め」472件(同8.3%)、「労働条件の引下げ」445件(同7.9%)と続いている。

なお、あっせんの申請があったものの中で、28年度内に処理したものは5083件となっており、このうち処理期間の目標である2ヵ月以内に処理したものが4503件(88.6%)となった。