精神障害の労災申請は過去最多の1515件

厚生労働省は、平成27年度「過労死等の労災補償状況」(過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の労災補償状況)をまとめた。それによると、脳・心臓疾患の労災請求件数は795件、業務上認定件数は251件となっている。請求件数は4年ぶりの増加、業務上認定件数は3年連続の減少となった。また、精神障害の労災請求件数は1515件(過去最多)、業務上認定件数は472件となり、請求件数は3年連続の増加、業務上認定件数は2年ぶりの減少となった。

  •  まず、脳・心臓疾患(労働基準法施行規則別表第1の2第8号に係る脳・心臓疾患)に関する事案の労災補償状況についてみると、請求件数は795件となっており、前年度(763件)と比べ32件増加し4年ぶりに増加に転じた。また、支給決定(業務上認定)件数は251件で、前年度(277件)と比べ26件減少し3年連続の減少となった(27年度以前に請求があり27年度中に業務上認定されたものを含む。以下同じ)。

    請求件数及び業務上認定件数を業種別(中分類)にみると、請求件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」の133件(全体の16.7%)、次いで、「総合工事業」48件(同6.0%)、「その他の事業サービス業」45件(同5.7%)、「飲食店」38件(同4.8%)、「職別工事業(設備工事業を除く)」38件(同4.8%)──の順となっている。

    業務上認定件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」の82件(全体の32.7%)、次いで、「総合工事業」16件(同6.4%)、「飲食店」15件(同6.0%)、「その他の小売業」11件(同4.4%)──の順となっている。

    職種別(中分類)にみた請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「自動車運転従事者」の153件(全体の19.2%)、次いで、「営業職業従事者」54件(同6.8%)、「建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)」40件(同5.0%)、「商品販売従事者」38件(同4.8%)、「法人・団体管理職員」37件(同4.7%)──の順となった。

    業務上認定件数が最も多いのは、「自動車運転従事者」の87件(全体の34.7%)、次いで、「法人・団体管理職員」22件(同8.8%)、「営業職業従事者」20件(同8.0%)、「飲食物調理従事者」14件(同5.6%)、「建築・土木・測量技術者」13件(同5.2%)──の順となっている。

    業務上認定された251件について、1ヵ月平均の時間外労働時間数をみると、「80時間以上100時間未満」が105件と最も多く、次いで、「100時間以上120時間未満」66件、「140時間以上160時間未満」20件、「160時間以上」18件と続いている。このほかに、認定要件のうち、「異常な出来事への遭遇」または「短期間の加重業務」により業務上認定された事案が14件ある。

    次に、精神障害(労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害)に関する事案の労災補償状況は、請求件数は1515件となっており、前年度(1456件)と比べ59件増加し3年連続の増加となり、過去最多を更新した。また、業務上認定件数は472件で、前年度(497件)と比べ25件減少し2年ぶりの減少となった。

    業種別(中分類)の請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「社会保険・社会福祉・介護事業」の157件(全体の10.4%)、次いで、「医療業」96件(同6.3%)、「道路貨物運送業」69件(同4.6%)、「情報サービス業」58件(同3.8%)──の順となっている。

    業務上認定件数が最も多いのは、「道路貨物運送業」36件(全体の7.6%)、次いで、「社会保険・社会福祉・介護事業」24件(同5.1%)、「医療業」23件(同4.9%)、「その他の小売業」21件(同4.4%)──の順となっている。

    職種別(中分類)にみた請求件数及び業務上認定件数は、請求件数が最も多いのは、「一般事務従事者」の241件(全体の15.9%)、次いで、「営業職業従事者」90件(同5.9%)、「商品販売従事者」86件(同5.7%)、「自動車運転従事者」77件(同5.1%)──の順となった。

    業務上認定件数が最も多いのは、「一般事務従事者」の61件(全体の12.9%)、次いで、「法人・団体管理職員」42件(同8.9%)、「自動車運転従事者」34件(同7.2%)、「商品販売従事者」25件(同5.3%)──の順となっている。

    なお、精神障害に係る事案の場合、精神障害の結果、自殺(未遂を含む)に至るケースがあり、27年度は請求件数が199件(対前年度比14件減)、業務上認定件数が93件(同6件減)となった。