時間外が月100時間超の事業場を徹底指導
厚生労働省は、「平成27年度地方労働行政運営方針」を策定し、都道府県労働局に通達した。27年度の運営方針における労働基準行政の重点施策では、時間外労働時間数が月100時間を超えているとみられる事業場等に対する監督を徹底する。また、有期契約労働者に対する契約を更新する場合の基準の明示や雇止めの予告等について、使用者に対する指導を徹底するとしている。安全衛生対策では、派遣労働者をはじめとした非正規労働者に対する雇入れ時教育の徹底・教育内容の充実を図ることとしている。
- 運営方針は、今年度の地方労働行政の柱を示したもので、各都道府県労働局では、これを踏まえて各々の管内事情に即した重点を盛り込んだ独自の運営方針を策定し、行政運営を行っている。
27年度の運営方針は、地方労働行政の課題、地方労働行政の展開に当たっての基本的な対応を記したうえで、重点施策を行政分野別に示している。
分野別の重点施策は、(1)東日本大震災からの復興支援、(2)総合労働行政機関として推進する重点施策、(3)労働基準行政の重点施策、(4)職業安定行政の重点施策、(5)職業能力開発行政の重点施策、(6)雇用均等行政の重点施策、(7)労働保険適用徴収業務等の重点施策、(8)個別労働関係紛争の解決の促進──となっている。
その中から、労働基準行政の重点をみると、初めに、過労死等の防止、経済の好循環の実現が求められている中で、労働基準行政に求められる役割は変化していることを挙げ、今後の労働基準行政の運営においては、「監督指導では、法定労働条件の遵守徹底のための迅速かつ厳正な対応行うとともに、地域全体の労働環境の底上げを図るため、地域の有力企業への働きかけ等、監督指導以外の手法も活用した労働条件の向上に向けた総合的な施策を推進する」としている。
そして、施策の柱として、①働き方改革の推進、②労働条件の確保・改善対策、③最低賃金制度の適切な運営、④適正な労働条件の整備、⑤労働者が安全で健康に働くことができる職場づくり、⑥労災補償対策の推進、⑦労働基準監督署の窓口サービスの向上、各種権限の公正かつ斉一的な行使、⑧社会保険労務士制度の適切な運営──を掲げている。
働き方改革の推進については、過重労働が行われているおそれがある事業場に対して、労働時間管理、長時間労働を行わせた場合における面接指導の実施等を含む健康管理に関する窓口指導、監督指導等を徹底する。また、使用者、労働組合等の労使当事者が時間外労働協定を適正に締結するよう関係法令の周知を徹底するとともに、特別条項において限度時間を超える時間外労働にかかる割増賃金率を定めていないなどの不適正な時間外労働協定が届け出られた場合には、限度基準告示等に基づき指導を行うとしている。
特に、各種情報から時間外労働時間数が1ヵ月当たり100時間を超えていると考えられる事業場や長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対して、監督指導を徹底する。
また、年次有給休暇の取得促進を図る取組みとして、10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、重点的な周知・広報を行うこととしている。
労働条件の確保・改善対策では、管内の実情を踏まえつつ、労働基準関係法令の遵守徹底を図るとともに、重大または悪質な事案に対しては、厳正に対処するとしている。特に、有期契約労働者については、労働基準法に基づく「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」の明示及び「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に基づく雇止めの予告等について、監督指導、窓口相談等において使用者に対する指導を徹底するとしている。
次に、安全衛生関係では、労働災害を減少させるための業種横断的な対策として、転倒災害、交通労働災害や非正規労働者対策に取り組む。また、重点業種対策として、製造業、建設業、陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設、飲食店を中心に、引き続き第12次労働災害防止計画(計画期間:平成25年度~29年度)の重点対策などに取り組むこととしている。
その中で、特に、派遣労働者や外国人労働者をはじめとした非正規労働者に対する雇入れ時教育をはじめとする安全衛生教育の徹底と教育内容の充実を図る。
職場におけるメンタルヘルス対策では、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の施行(27年12月1日)に向けて、あらゆる機会を通じて制度の周知徹底を図る。また、産業保健総合支援センターにおいて実施する医師、保健師等を対象としたストレスチェック制度に関する研修、労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェック制度の実施に対する地域産業保健センターによる支援など、制度の円滑な実施に向けた支援の活用の促進を図ることとしている。