対策の数値目標を新たに柱の1つに据える

厚生労働省は4月24日、第11回「過労死等防止対策推進協議会」(会長・岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)を開催し、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の改定案(素案)を提示した。改定案は、過労死等防止対策の数値目標部分を新たに柱の1つに据えているのが特徴。数値目標は、2020年までに、①週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下とすること、②年次有給休暇の取得率を70%以上とし、特に、年休取得日数が0日の者の解消に向けた取組みを推進する──などとしている。

 「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下「大綱」)は、過労死等防止対策推進法に基づき定められている(平成27年7月24日閣議決定)。大綱には、おおむね3年を目途に見直しを行うとする規定が置かれており、また、大綱の変更に当たっては、過労死等防止対策推進協議会の意見を聴くことが同法に定められている。

改定案は、現在の大綱では「当面の対策の進め方」(大綱の第3「過労死等の防止のための基本的考え方」の1)の中で示している労働時間や年次有給休暇取得率などの目標に関する部分を、新たに「過労死等防止対策の数値目標」として柱の1つに据えている。数値目標は、労働時間、年次有給休暇の取得、勤務間インターバル制度及びメンタルヘルス対策について設定し、早期達成を目指すとしている。

具体的には、①労働時間については、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下とする(2020年まで)、②年次有給休暇の取得率を70%以上とする(2020年まで)。
特に、年休の取得日数が0日の者の解消に向けた取組みを推進する、③メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする(2022年まで)、④仕事上の不安、悩み、ストレスについて、職場や事業場外資源を含めた相談先のある労働者の割合を90%以上とする(2022年まで)、⑤ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上とする(2022年まで)──を掲げている。

なお、勤務間インターバル制度に関しては、今回の改定案では具体的な数値目標は示さず、大綱に掲げる目標をどのように考えるか各委員の意見を聴いた。

このほか、国が取り組む重点対策の1つである調査研究等の中の過労死事案の分析について、中心となる職種・業種に自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界を挙げている。また、労災保険に特別加入している自営業者や法人の役員の事案についても分析を行うことを示した。

さらに、上記の職種・業種については、毎年2業種ずつ企業、労働者等に対する実態調査を実施し、過重労働が業務上の災害のみならず通勤状況など労働者の生活に与えている影響についても把握しつつ、分析を行うとしている。

同省は、同協議会の意見をさらに聴いたうえで大綱の改定内容を最終決定することとしており、今年7月には改定後の大綱が閣議決定される見通し。