妊娠に伴う他者への業務偏り減らす措置を

厚生労働省は、先の通常国会で成立した雇用保険法等の一部改正法における改正育児・介護休業法、改正男女雇用機会均等法の関係省令・指針案の内容をまとめた。それによると、妊娠した労働者等の就業環境の整備として事業主に義務付けられる措置として、妊娠、出産等に関する労働基準法、男女雇用機会均等法などの制度または措置が利用できる旨を就業規則・社内報等で明確にすること、また、妊娠等した労働者の周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう業務分担を見直すこと──などを規定するものになっている。

  •  今年3月29日に成立し、同31日に公布された雇用保険法等の一部を改正する法律は、雇用保険法をはじめ、労働保険徴収法、育児・介護休業法、男女雇用機会均等法など労働関係の6つの法律を一括改正したもの。そのうち、改正育児・介護休業法、改正男女雇用機会均等法の施行期日は、平成29年1月1日となっている。

    今回まとめられた改正法の関係省令案・指針案の主な項目は、(1)育児休業の対象となる子の範囲の拡大、(2)介護休業等の対象家族の範囲の拡大、(3)子の看護休暇及び介護休暇に関する事項、(4)介護のための所定外労働の制限に関する事項、(5)介護のための所定労働時間の短縮措置等に関する事項、(6)職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置に関する事項、(7)職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置に関する事項──などとなっている((1)~(6)は育児・介護休業法関係、(7)は男女雇用機会均等法関係)。

    主な内容をみると、子の看護休暇・介護休暇(年5日)の取得単位として改正法で認められることとなった省令で定める「1日未満の単位」は、「半日」とし、半日単位の休暇を取得する際は、休暇の取得開始及び終了の日時を申し出ることとしている。また、半日単位で取得できない労働者として、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者を省令で規定する。

    なお、「半日」は、原則として1日の所定労働時間数(日によって異なる場合は1年間の1日平均所定労働時間数)の2分の1とし、所定労働時間数に1時間未満の端数がある場合は、1時間に切り上げて計算するとしている。ただし、労使協定により、所定労働時間の2分の1以外の時間数を「半日」とすることも可能としている。また、半日単位の休暇は、始業時刻または終業時刻と連続して取得することとしている。

    さらに、業務の性質もしくは業務の実施体制に照らして、半日単位での取得が困難な業務に従事する労働者として労使協定で適用除外することができる者の例示として、「長時間の移動を要する遠隔地で行う業務であって、半日単位で取得した後の勤務時間または取得するまでの勤務時間では処理することが困難な業務」、「流れ作業方式や交替制勤務による業務であって、半日単位で取得する者を勤務体制に組み込むことによって業務を遂行することが困難な業務」──などを指針で定めるとしている。

    次に、改正法で事業主に義務付けられた職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置について、対象となる制度・措置として、①育児休業、②介護休業、③子の看護休暇、④介護休暇、⑤所定外労働の制限、⑥時間外労働の制限、⑦深夜業の制限、⑧育児のための所定労時間の短縮措置、⑨始業時刻変更等の措置──などを省令で規定する。

    そして、事業主が講ずべき措置として、指針で、①事業主の方針の明確化及び周知・啓発、②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応、④育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置──などを定めるとしている。

    加えて、事業主の方針が明確化されている例として、就業規則への規定、社内報、社内ホームページ等への記載などを挙げている。また、育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置として、業務体制の整備などを掲げ、必要な措置が講じられている例として、制度等を利用する労働者の周囲の労働者への業務の偏りが軽減よう適切に業務分担の見直しを行うこと、業務点検を行い、業務の効率化等を行うこと──を挙げている。

    同様に、改正男女雇用機会均等法により事業主の措置義務となった職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置について、対象となる事由として、①妊娠したこと、②出産したこと、③労働基準法に基づく産前産後休業、育児時間、軽易業務への転換、時間外・休日・深夜業の制限の請求等、④労働基準法に基づく坑内業務・危険有害業務の就業制限──などを省令で規定する。

    そして、事業主が講ずべき措置として、指針で、①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発、②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場における妊娠、出産等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応、④妊娠、出産等に関するハラスメントの原因の背景となる要因を解消するための措置──などを規定するとしている。

    加えて、事業主が措置していると認められる例として、上記①に関しては、就業規則への規定や社内報への記載、上記④に関しては、妊娠等した労働者の周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うこと──などを挙げている。