優良な受入企業に限り実習期間最長5年に延長

技能実習制度の見直しに向け、具体的な方策について検討を行っていた「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」(座長・多賀谷一照獨協大学法学部教授)はこのほど、報告書を取りまとめた。報告書は、技能実習の期間について、一定の要件を満たす場合は最長5年間(現行3年間)とすることを打ち出している。

技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国の外国人を日本で一定期間に限り受け入れ、企業で雇用関係の下、OJTを通じて技能を修得・習熟する制度。対象となる職種・作業は69職種・127作業の多岐にわたっている(平成27年1月23日時点)。

こうした中、昨年6月に、法務省第6次出入国管理政策懇談会・外国人受入れ制度検討分科会「技能実習制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」及び「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)により、制度見直しの方針が示された。

これを受けて同懇談会では、昨年11月から、制度の趣旨・目的に沿った技能等の修得・移転が確保され、かつ、技能実習生の人権確保が図られるよう、管理監督体制の強化を前提としつつ、制度拡充の具体策を検討してきた。

報告書は、(1)実習生を受け入れる非営利の監理団体(商工会、事業協同組合等)及び実習実施機関(受入企業)の適正化、(2)人権侵害行為等の防止及び対策、(3)実習期間の延長または再実習、(4)受入人数枠の見直し、(5)対象職種の拡大等──などについて見直しの内容を示している。

その中で、監理団体及び実習実施機関の適正化に関しては、これらの受入機関へ立入調査や報告徴収等の指導監督業務を行う「制度管理運用機関」を新設するとしている。また、不適正な行為を行った監理団体及び実習実施機関に対する罰則や名称の公表制度を整備するとしている。

人権侵害等の防止及び対策に関しては、実習生の賃金等の処遇の適正化を図るため、実習実施機関に対して、実習生の賃金が日本人と同等額以上であることを制度管理運用機関及び監理団体に説明する責任を負わせることとしている。

また、実習期間の延長または再実習については、一定の要件を満たす優良な監理団体、実習実施機関及び実習生についてのみ、最長5年間まで認めるとしている。そして、その要件として、監理団体、実習実施機関にあっては、①実習生に対する適切な相談体制を整備していること、②行方不明者が発生していないこと、③技能実習計画等に基づき技能等の修得が着実に行われたこと(技能評価試験の合格率)、④実習生に対する適切な指導体制を整備していること──などを示している。また、実習生については、技能検定3級相当の実技試験の合格者としている。

なお、実習期間の延長または再実習は、一旦帰国(原則1ヵ月以上)後に実施することとし、帰国に係る渡航費用は、監理団体または実習実施機関が負担すべきとしている。

このほか、対象職種の拡大として、介護分野を追加することについて、厚生労働省の「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」(座長・根本嘉昭神奈川県立保健福祉大学名誉教授)における検討結果を踏まえ適切に対応すべきであるとし、新たな技能実習制度の施行と同時に職種追加する方向性を示した。

法務省及び厚生労働省は、報告書の内容に基づき、新たな技能実習制度実施に向けて、制度管理運用機関の設立などを定める新法案と、実習生の在留資格を定めている出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案を近く国会に提出する予定。