違法残業や不払残業の法違反率83.6%
厚生労働省は、昨年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の結果をまとめた。それによると、監督を実施した4561事業場のうち、83.6%に当たる3811事業場に労働基準関係法令違反が認められた。違反率は、同省が一昨年9月に実施した同様の監督の結果(違反率82.0%)を上回った。違反内容をみると、全体の半数以上の2304事業場に違法な時間外労働があった。同省は、違反事業場に対しては、是正勧告書を交付し指導を行っており、それでも改善しない場合は、送検も視野に入れて対応する方針。
今回の監督は、同省が昨年9月に設置した「長時間労働削減推進本部」(本部長・塩崎恭久厚生労働大臣)の指示の下に実施したもの。同推進本部は、「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)において、「働き過ぎ防止のための取組推進」が盛り込まれたこと、また、昨年の通常国会で「過労死等防止対策推進法」が制定(平成26年11月1日施行)されるなど、長時間労働対策の強化が喫緊の課題となっている中、その取組みを総合的に推進することを目的に設置された。
こうしたことから、監督は、長時間労働の削減の徹底を目的とし、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場などを対象に行っている。
監督結果をみると、監督を行った4561事業場のうち、3811事業場に労働基準関係法令違反が認められた(違反率83.6%)。主な違反事項別では、時間外労働協定(36協定)がなく時間外労働を行っているもの、36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行っているものなど違法な時間外労働があった事業場が2304事業場(全体の50.5%)、賃金不払残業(サービス残業)があった事業場が955事業場(同20.9%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施(1ヵ月当たり100時間以上の時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないものなど)の事業場が72事業場(同1.6%)となっている。
このうち、違法な時間外労働があった2304事業場における時間外・休日労働時間が最も長い労働者の実績をみると、1ヵ月100時間を超えるものが715事業場(違反事業場の31.0%)、うち1ヵ月150時間を超えるものが153事業場(同6.6%)、うち1ヵ月200時間を超えるものが35事業場(同1.5%)となっている。
主な業種別(監督実施事業場数が100以上の業種)の違反率をみると、接客娯楽業が90.2%と最も高く、次いで、運輸交通業86.3%、保健衛生業86.2%、商業86.0%、製造業84.2%、建設業77.3%の順となっている。
次に、健康障害防止に係る指導状況をみると、監督を実施した事業場のうち2535事業場に対して、長時間労働を行った労働者に対し、医師による面接指導等を実施することなどの過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導した。指導事項(重複あり)の内訳は、時間外・休日労働を1ヵ月当たり80時間以内とするための具体的方策の検討・具体的な期限までの実施を指導したものが1362事業場、時間外・休日労働を1ヵ月当たり45時間以内とするよう削減に努め、その具体的方策を検討し、その着実な実施に努めるよう指導したものが1122事業場、長時間労働による労働者の健康障害防止対策について、衛生委員会で調査審議を行うよう指導したものが825事業場、2~6ヵ月で平均80時間を超える時間外労働を行っている労働者または1ヵ月100時間を超える時間外労働を行っている労働者について、面接指導等の必要な措置の実施に努めるよう指導したものが560事業場などとなっている。
また、1035事業場に対して、労働時間の管理が不適正であるため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13・4・6 基発第339号)に適合するよう労働時間を適正に把握することなどを指導した。
なお、同省では、これら違反が認められた事業場に対しては、是正・改善に向けた指導(是正勧告書の交付)を行っているところであり、それでも法違反を是正しない事業場に対しては、司法処分するなど厳しく対応することとしている。