複数事業場で不適正運用あれば企業名公表
厚生労働省は、裁量労働制の不適正な運用が認められた企業に対する指導・企業名公表について、都道府県労働局長に指示した。それによると、臨検監督時に、裁量労働制の対象労働者の約3分の2以上の者が対象業務でない業務に従事し、その約半数以上に労働時間関係の法違反が認められ、かつ1ヵ月当たり100時間以上の時間外・休日労働を行っている者がいる実態が複数の事業場で確認された大企業に対しては、経営トップを呼び出した上で、法違反の是正を求める指導書を交付し、その企業名を公表するとしている。
この取組みは、昨年12月28日に閣議決定された「労働施策基本方針」を踏まえたもの。基本方針は、働き方改革関連法による改正後の労働施策総合推進法に基づき策定されている。
そして、基本方針では、労働施策に関する基本的な事項として、労働時間の短縮等の労働環境の整備に関して、「労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する」旨が盛り込まれた。
これを踏まえ、労働基準監督署における監督の結果、事案の態様が法の趣旨を大きく逸脱しており、これを放置すると全国的な遵法状況に悪影響を及ぼすものについて、都道府県労働局長による特別の指導及び企業名公表の手続を定めた。
それによると、取組みの対象となるのは、複数の事業場を有する社会的に影響の大きい企業において、裁量労働制の不適正な運用が認められた場合で、中小企業は除くとしている。
具体的には、通常の監督指導において、①裁量労働制の対象労働者の概ね3分の2以上について、対象業務に該当しない業務に従事していること、②前記①に該当する労働者の概ね半数以上について、労働基準法第32条・40条(労働時間)、第35条(休日労働)または第37条(割増賃金)の違反が認められること、③前記②に該当する労働者の1人以上について、1ヵ月当たり100時間以上の時間外・休日労働が認められること──の実態が認められた場合は、当該企業の本社及び支社等に対する全社的な監督指導を実施し、裁量労働制の運用状況を確認する。
そして、その結果、不適正な運用実態が組織的に複数の事業場で認められ、当該企業が裁量労働制を相当数の労働者に適用しているときは、代表取締役等の経営トップを本社を管轄する労働局に呼び出した上で、局長が、早期の法違反是正に向けた全社的な取組みの実施を求める指導書を交付する指導を行う。
併せて、指導を実施した際に、①企業名、②裁量労働制の不適正な運用、それに伴う労働時間関係違反等の実態、③局長から指導書を交付したこと、④当該企業の早期是正に向けた取組方針──を公表するとしている。