オルト─トルイジンによる膀胱がんを追加規定

厚生労働省は昨年12月7日、労働政策審議会(会長・樋口美雄(独)労働政策研究・研修機構理事長)に対して、業務上疾病の範囲について列挙している労働基準法施行規則別表第1の2に、「オルト─トルイジンにさらされる業務による膀胱がん」を追加規定することを内容とした「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」を諮問した。

労働基準法は、使用者が災害補償責任を負う業務上疾病(職業病)の範囲について、同法施行規則別表第1の2に列挙している(法第75条、同法施行規則第35条)。

これは、業務上疾病とされるものを具体的にリスト化することで、保険給付の請求を容易にし、業務上疾病に対する迅速かつ公正な補償を図ることを目的としている。また、これによって、使用者や労働者は業務上疾病がより分かりやすくなり、使用者の安全衛生上の配慮措置を明確化する役目を果たしている。

同省では、同別表第1の2に掲げる業務上疾病の範囲について、定期的に医学的検討を行っている。

今回の改正は、同省の「労働基準法施行規則第35条専門検討会」(座長・櫻井治彦慶應義塾大学名誉教授)が昨年11月22日にまとめた報告書に基づくもの。

同検討会は、前回検討を行った平成25年度以降、染料・顔料の中間体を製造する化学工場の複数の労働者が、業務で扱ったオルト─トルイジンにばく露したことにより、膀胱がんを発症したとする労災請求が平成28年1月になされ、その業務上外判断に当たり、専門家が報告書(平成28年12月)をまとめていることなどから、同別表第1の2に追加すべき疾病があるか否かの検討を行った。

そして、オルト─トルイジンにばく露する業務に一定年数以上従事した労働者に発症した膀胱がんについては、その業務が有力な原因となって発症した可能性が高いとした28年12月の報告書の結論は妥当であるとし、「オルト─トルイジンによる膀胱がん」を同別表第1の2に追加することが適当とした。

なお、平成25年度の検討会において、同別表第1の2に追加しないと結論された理美容師のシャンプー液等の使用による接触性皮膚炎については、同別表第1の2第4号9に該当する疾病として認定事例も多いことから、化学物質による疾病に関する分科会を設けて検討することが妥当とした。

同省は、同審議会の答申を得た後に省令の改正を行い、平成30年度中に施行する予定。